毅然

Kizen

#001~#030はこちらです。

VALDESPINO PALO CORTADO VIEJO CP

異彩の樽から成るシェリー ―― 「パロコルタド」を花開かせるのは、眼光鋭きセラーマスター!

ワイン業界において圧倒的影響力を持つロバート・パーカー氏が長期熟成モスカテルに100点満点をつけ、さらに他のアイテムも『ワイン・アドヴォケイト』で軒並み高得点を獲得、「ヘレスのロマネコンティ」との記述がなされるほど別格の評価を得ているシェリーの造り手が「バルデスピノ」。シェリー業界で今最も人気を集めている生産者と言えるでしょう。

その中でも人気の高い長期熟成シリーズより、品薄だった「パロコルタド ビエホ」が満を持して入荷してまいりました。

その生まれはヘレス・デ・ラ・フロンテーラの北西5kmに位置する「マチャルヌードアルト」。この地域で最も高いという炭酸カルシウムレベル60~65%のアルバリサ土壌の畑は「シェリーのグラン・クリュ」とも称されるバルデスピノ自慢の優良区画。そしてここに植えられた樹齢50年前後のパロミノ種を使い、同社の定番アイテム「イノセンテ フィノ」と「ティオディエゴ アモンティリャード」のソレラから特別な個性を持った樽のみを選び抜き、独自の類まれな熟成を施して造られるのがこの「パロコルタド ビエホ」なのです。

ちなみに「パロコルタド」とはスペイン語で「切られた棒」という意味になりますが、これは酒精強化後いよいよソレラシステム熟成に入ろうかとする前に行われる樽状態チェックで、本来フィノやアモンティリャードに仕立てられる予定だったにもかかわらず「これは特別な個性を持っている」と見なされた樽にチョークで書かれる特殊なマークにちなんでいます。また「ビエホ」は「古い」の意で、この作品が平均熟成25年を超える年季ものであることにちなみます。

そして特異なポテンシャルが認められたその樽はグループから外され、アルコール度数17%以上に再び酒精強化されます。これはフィノやマンサニージャの熟成(生物学的熟成)に必須の「フロール(産膜性酵母による膜)」を発生させないための処置。この度数では酵母は膜を張ることができず、ワインはフロールに空気を遮断されることなくオロロソのような「酸化熟成」の道を辿ることになるのです。「フィノ(アモンティリャード)・コース」から「パロコルタド・コース」へ…スタートは同じながら途中で得意分野が認められ、予定の進路から離れ新たな道を進む…なにか高校の特進生のような待遇ですね。

こうして空気と触れ合いながら熟成されたワインはアモンティリャードの繊細さとオロロソの豊満さを併せ持つ逸品に仕上がると言われていますが、実際こちらの「パロコルタド ビエホ」も『ワイン・アドヴォケイト』で93点を獲得する栄誉に与っており、シェリーの中でもトップクラスに位置づけられるバルデスピノの自信作になっています。

明るいマホガニー色をしたシェリーからは凝縮されたヘーゼルナッツやクルミのアロマが立ち上がり、加えてほのかなスパイシーさも。きりっとドライでミネラリーな味わいがスモーキーな香りを伴いつつ、長く丸みを帯びながらエレガントに続く…まったくもって繊細な形に仕上がっていることに驚かされるはずです。単独でもじっくりと味わいを楽しめる名品ですが、濃厚なスープやスパイシーなエスニック料理、燻製にしたチーズやお肉と素晴らしいマリアージュを見せる点も美食家の方々にとって見逃せないポイントでしょう。

いわば天賦の才を持って、スペシャルなシェリーへと変貌を遂げる「パロコルタド」。しかしその素晴らしい資質も、樽の育て役であるセラーマスターが見逃してしまえば花を咲かせることはありません。

ひとりひとりの個性をしっかりと見極め、それぞれがもっとも輝ける姿に陰ながら導いてゆく――さながら偉大な教育者のようなセラーマスターあってこその異端児が、パロコルタドなのかもしれません。

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SAINT ETIENNE RHUM FEDERICA MATTA

カリブの詩人がつないだ縁 ―― アートなラムを一口飲んで、想像の旅へいざ参らん!

1882年に製糖工場からラム蒸留所へと改築され、1994年にはシモン蒸留所のオーナーであるイブ、ホセ・アィヨ夫妻によって新たなスタートが切られた「サンテティエンヌ」。アィヨ夫妻はラム造りに情熱を注いだだけでなく、蒸留所そのものの歴史的価値を後世に伝えるべく建築物の修復と補強に尽力しました。

教養に富み、鋭い審美眼を持った芸術一家のアィヨ家ですが、そんな同家がラムのみならずマルティニークのアートシーンに活気を与えるべく立ち上げたのが「THE FOUDRES HSE(フードル・アビタシオン・サンテティエンヌ)」でした。

もともと老朽化した地下セラーとして使われていたこの場所に、サウンドシステムやプロジェクションスクリーン、コーヒーテーブルや居心地の良いクラブチェア、バーカウンターなどを新たに誂え、オリジナルスペースとして生まれ変わらせたのが2010年のこと。80~150人をも収容できるこの空間はアーティストや詩人、ミュージシャン、研究者などに開放されており、コンサート、上映会、講演会、ライブパフォーマンスなどが定期的に開催され、素晴らしくインタラクティブなミーティングスペースとして人気を博しているといいます。

そしてこのフードルHSE誕生に携わったのが、マルティニークの作家、詩人であるエドゥアール・グリッサン氏でした。1928年にサン・マリーで生まれたグリッサン氏は奴隷制度廃止論者のヴィクトル・シュルシェールにちなんで名付けられたリセ・シュルシェールという国立学校に進み、この学府で「植民地主義を拒絶し“ニグロの言葉”で語る」ことを訴える「ネグリチュード(黒人性)運動」を牽引したエメ・セゼール氏などからインスピレーションを受けつつ学業に励みました。さらに1946年にはパリへ渡り博士号を取得、異文化・異人種論の民族誌学を学び、歴史学と哲学をパリ大学で修めたのだといいます。カリブ海文学の優れた批評家として、その後のパトリック・シャモワゾーやラファエル・コンフィアンを含むクレオール文学作家に大きな影響を与えたグリッサン氏ですが、1992年にはノーベル賞候補にも挙がり、カリブ人の思想と文化の研究において第一人者と評されました。

そんなグリッサン氏が助言と指導を行いながら完成したのが「フードルHSE」でした。オープニングに際し2010年に開催された写真家ジャン・リュック・ド・ラガリーグ氏の個展「le Pays des Imaginés(想像の国)」では、グリッサン氏の詩的な世界を旅するがごとくの展示が楽しめたといいます。

そしてこの度ご紹介するサンテティエンヌの限定アイテム「ラム フェデリカ マッタ」のボトルデザインを手掛けたのも、グリッサン氏の詩をこよなく愛する芸術家、フェデリカ・マッタ氏なのです。 フランスとチリのハーフとして1955年にフランスのヌイイ・シュル・セーヌで生まれたフェデリカ・マッタ氏は美術教員勤めの傍ら、世界を旅しつつ絵画や彫刻、壁画の制作に取り組んでいるアーティスト。自らを「放浪アーティスト」と呼ぶマッタ氏の作品は日本でも見ることができ、福岡の東平尾公園博多の森球技場に「PIM PAM POOM」という彫刻が設置されています。ボールを蹴る音を表したタイトルのこの作品は、サッカープレイの躍動感と日本の光と自然を表現したというもので、カラフルに彩られたユーモラスなキャラクターが広々とした球技場の青い空の下で人々を楽しませています。

また、マッタ氏は2007年にエドゥアール・グリッサン氏主導で設立された「Tout-Monde Institut(世界にクレオール文化、芸術、思想を発信するための協会)」の創立メンバーの一人でもあったのですが、そんな氏とサンテティエンヌのラムが出会ったのは2012年のこと。サンテティエンヌの共同社長であるフロレット・アィヨ氏がフランスのボルドーで開かれていたマッタ氏の展覧会を訪れた際にグリッサン氏の詩を介してマッタ氏と意気投合、コラボボトルのアイデアが生まれ、商品化に至ったのだそうです。

カリブの海や空、月と星、空飛ぶ鳥に神秘的な生物が描かれたボトルは、抜群の存在感を誇るもの。そのアーティスティックな美しさは、バックバーでもひときわ映えることでしょう。ボトルを満たすゴールドラムは4000Lのフレンチオーク樽で12~18ヶ月の熟成を経たもので、レーズンや洋ナシの美しい風味に続いてバニラとサトウキビのアロマが高まり、佳麗な熟成感を伴ったまろやかでエレガントな味わいが楽しめます。

エドゥアール・グリッサン氏は2011年に逝去されましたが、2016年にはフードルHSEでフェデリカ・マッタ氏によるグリッサン氏追悼の個展「Le Voyage des Imaginaires(想像の旅)」が開かれました。そしてこの「Le Voyage des Imaginaires」の語は「ラム フェデリカ マッタ」のラベル中央にもしっかりと刻まれているのです。

上品でたおやかな芳香と甘くやわらかな味わいは、文字どおり想像の旅へと誘ってくれそうな魅力を湛えたもの。せっかくなら、グリッサン氏の著作を紐解きながら杯を傾けてみたいですね。

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SAVANNA RHUM 5YO・LE MUST

熱帯火山のパワーが結実!アロマ溢れるサバンナラムは、うだる酷暑の滋養薬!

インド洋の西部、マダガスカルとモーリシャスの二島に挟まれるような形で位置するフランスの海外県、レユニオン島。火山島として知られるこの島には噴火でできたカルデラが渓谷や滝を多く形作っており、世界遺産にも登録されています。人口120万人超のモーリシャスに比べ、人の数は約80万人とやや少なめですが、自国の海外県としてフランス人が好んでバカンスに訪れるリゾート地として人気を集めています。

レユニオンの大きな魅力のひとつとして挙げられるのが、多文化が混合した「クレオール」を衣食住のさまざまな面で垣間見ることができること。入植者や出稼ぎ外国人の母国料理とフランス料理のエッセンスが混じり合う様は興味深く、米と一緒に「カリ(カレー)」や「ルガイユ」という香味野菜とトマトベースの辛い煮込み料理がよく食される一方で、フランス人お得意のパンも文句なしの美味しさです。またコーヒー好きの方には、世界を股にかけるコーヒーハンターとして知られる川島良彰氏が発見した伝説的品種「ブルボン・ポワンテュ種」の故郷としても知られています。

しかしここレユニオンが名高い観光地であるだけでなく、高品質なラムの生産地でもあることをご存知の方は、そう多くはないかもしれません。現在レユニオンでは三つのラム蒸留所が稼動しているのですが、今回ご紹介するのは島北東のサン・アンドレにある「サバンナ」が手掛けるラムになります。

サバンナ蒸留所は島に大規模な発電所が完備されたのを受け、1948年に現在の場所に移設されましたが、その歴史は古く1870年代にはラムの製造を始めています。しかし当初造られていたのは輸出用のライトラムが主で、2002年にオリジナルブランドの「サバンナラム」がリリースされるまでは樽での販売に徹していました。現在同社が誇る良質なラムは、蒸留所を移築し生産ラインを整えることで皆さまにお届けできるようになったのです。

さて、サバンナが他の蒸留所と比べ一目置かれている理由として、その独特の製法が挙げられます。というのもサバンナでは一般的なラムの「五倍以上の発酵期間」を設けており、これは通常では採用されないような手間のかかる仕立て方。しかしこの長期発酵により、出来たてのラムブランにも青っぽさは一切感じられず、さらにはトロピカルな風味がしっかりと籠められるのです。

まずご紹介する「サバンナ ラム 5年」は熟成に複数のコニャック古樽を用いることで、溢れ出さんばかりの絶妙なアロマと力強さが兼ね揃えられたトラディショナルラムです。コラムスチルを使用して蒸留されており、心地よいフルーティーな香りから、マンゴー、パイナップル、パッションフルーツなどのトロピカルフルーツや、アーモンドやマジパンの印象へと変化してゆく様はぜひ一度体験いただきたいもの。味わいには円熟味もあり、かすかなアニスシードと共にサフランやカレーといった穏やかなスパイスの風味が骨格を作っています。チョコレートとの相性が抜群であることもラム好きの方には見逃せないポイントですが、同時に入門編ラムとして初心者の方にもぴったりなので、この夏、特にロックで楽しんでいただくのがお勧めです。

対する「サバンナ ラム レ・マスト」は、サバンナのDNAを体現する「最長9年熟成のトラディショナルラム」と「6年熟成のグランアロームラム」を約7:1~8:1の割合でブレンドした新定番アイテム。発酵期間はトラディショナルが24時間、グランアロームが6~10日で、グランアロームは銅製のSavalle社コラムスチルを使用しています。バナナ、洋ナシ、白桃にまたがるフルーティーさと、酸味のあるハードキャンディのような香りが立ち上り、その後ハチミツやレーズン、デーツ、アンズといったドライフルーツへと移ってゆく表情の変化が魅力的。ちなみにこちらは「スピリッツ・セレクション・バイ・コンクール・モンディアル・ド・ブリュッセル2022」でみごと金賞を受賞しており、まさに「レ・マスト(マスト・バイ)」の名に相応しい仕上がりになっています!さすがはサバンナのマスターブレンダーが商品開発に心血を注いだだけはある逸品ですが、今後もバッチ生産でのリリースとなりますので、見かけた時こそ買い時です!

猛暑で目が回ってしまいそうな2022年の夏…ひと息つきたい夕暮れ時は、アロマ溢れる特上のラムで優雅な暑気払いと洒落こみましょう!

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CHARRETTE RHUM BLANC TRADITIONNEL

レユニオンのソウルドリンク!島の全てが詰まったラムは、飲み飽き無縁の共同作品!

前回ご紹介した「サバンナラム」の生まれ故郷・レユニオン島から、この夏ぜひともお勧めしたい新アイテムが到着いたしました。その名も「シャレット ラムブラン トラディショネル」、島内シェアナンバーワンを誇る大人気ラムブランです!

こちらはレユニオン島で稼働している「サバンナ」「リヴィエールデュマ」「イゾティエ」の三つの蒸留所によるキュヴェを巧みにブレンドして造ったラムブラン。ボトリングまですべての工程をレユニオンで行っており、まさにレユニオンラムのアイコン的なアイテムと言えるのです。

スパイスやフルーツを漬け込む「ラム・アランジェ」やカクテルベースとして、バーや家庭で広く楽しまれているこの一本。日本に輸出されているのはお手頃な1リットルサイズですが、現地では10リットルの大容量ボックスも販売されており、いかに日常的に楽しまれているかがよく分かります。ちなみに1リットルサイズのものだけとっても実に50%を超える圧倒的な島内シェアを獲得しているのですが、ボックスタイプ等その他のサイズ展開を合算するとさらにシェアは大きくなるというのですから、もはや「一家に一本」レベルの島のソウルドリンクと言ってよいでしょう!

なお「シャレット」とはラベルに描かれているサトウキビを運搬する牛車のことを指しており、サトウキビ栽培によって発展してきた島の歴史そのものを表しています。その物語はマスカレン、ブルボン、レユニオンと名前を何度も付け替えられたこの島の歴史と深く絡み合うもので、インド洋の中心にある亜熱帯火山島で三世紀にもわたってサトウキビを栽培してきた人たちをおいて、シャレットを語ることはできないのです。

それは遡ること1972年、レユニオンという地を忠実に体現する本物のラムを造りたいと集まった島の全蒸留所が、何世紀にもわたって受け継がれてきたあらゆる技術を結集し、生み出したのがシャレットでした。そう、クレオールラムの造り手たちによるあらん限りのノウハウが加わることで、シャレットのラムはぶれることなく輝ける個性を発揮し続けているのです。

グラスに注いだ清らかな液体に顔を近づければ、青りんごやパイナップルなどのフルーツフレーバーがはっきりと感じられる芳香を有しながら、アルコール臭やアグリコールラム特有の青っぽさは感じられず、どこまでもフルーティーな印象に驚かされます。味わいは三種のブランの長所が見事な相乗効果を生んでおり、しっかりとしたボディと対照的にアルコール感は慎ましやかで、やはりフルーティーなアロマが鼻腔を駆け抜けてゆくのが実に心地良く感じられます。

度数の高いお酒やラムなどを飲みなれていない方にも親しみやすい味わいは、まさにレユニオンの傑作と言えるもの。前述のように当地では大容量ボックスで販売されているくらい一年を通して楽しむことのできる「常備品」ラムですが、毎日同じ味わいではさすがに飽きてしまうのでは?と思われるかもしれません。しかしその点はご心配なく!シャレットの公式サイトには大定番のモヒートやピニャコラーダはもちろんのこと、スイカの果肉をたっぷりと使った「パステーク(Pastèque:スイカ)」や、リボン状にスライスしたお洒落なキュウリをレモネードと合わせて楽しむ「コンコンブル(Concombre:キュウリ)」など、暑い夏には喉が鳴ってしまいそうな美味カクテルレシピが満載されています!またオレンジやレモンの皮、シナモンスティック、クローヴ、ジンジャー、バニラポッドなどをシャレットに漬け込んで三か月ほど待てば、抜群の風味を持つ「オー・エピス(Aux epices:スパイス)」が完成。さまざまな香りが協奏する漬けラムが傍らにあれば、秋の夜長もより楽しくなることでしょう。

季節の果物やエキゾチックなスパイス、さまざまなハーブなどあらゆる素材を大らかに受け入れ、己との見事な一体化を実現させる懐深きラム「シャレット」。それは三位一体となってレユニオンの魂ともいえる作品を生み出した、三つの蒸留所が持つ風格の表れなのかもしれません。

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JINX OLD TOM GIN

ポーカーフェイスの実力派。黒き福猫・ジンクス君が、ジンのもろもろ、お教えします。

魔女の使い、不吉の象徴…といった不穏な存在に思われがちな「黒猫」。実はそれとは正反対の魔除けや幸運を呼ぶシンボルとされることもあるのです。そういえば夏目漱石の『吾輩は猫である』の主人公の黒猫も、足裏の爪の先まで真っ黒な「福猫」だったとか。

「ジンクス オールドトム・ジン」でおなじみの英国生まれの雄猫ジンクス君も、幸運を象徴する猫として多くの方から愛されているマスコットキャラクターです。ちなみにマスコットという語自体が「人々に幸運をもたらすと考えられている人や動物、もの」を指しているということで、ジンクス君にぴったりの呼称と言えるでしょう。

さてロンドンドライ・ジンより甘めになる「オールドトム・ジン」ですが、これはまだ蒸留技術が発達しておらず、甘みやジュニパーを多く添加しないと飲めないような荒々しい味わいだった時代のジンの名残。もとは利尿剤研究の過程で生まれた薬酒が祖だと言われているくらいですから、当時のジンの味というのは想像以上にハードなものだったのでしょう。言うなれば、いまやジンの個性の一つとして知られているボタニカルは、ジュニパーを強くしたりハーブを増やしたりして、よりスムーズにジンを飲めるようにするためのアイディアの一つだったというわけです。

では、なぜこのようなタイプのジンが「オールドトム=黒猫」と呼ばれるようになったのでしょうか。 この呼び名になったのは諸説あるようですが、有力なものとしては18世紀のジン密売所の看板が黒猫であったからという説が挙げられます。

当時、ロンドン市民のジン乱用を危惧したイギリス政府は販売規制を強化するなどの対策を取っていましたが、それでもこっそり飲みたいというのが今も昔も変わらぬ愛酒家の性。そこで当然のように出て来たのが密売所というわけですが、これはいわば「有人のジン自動販売機」のようなシステムで、看板に描かれた黒猫の口に硬貨を投げ込むと、裏手の店員の操作で尻尾や足先のホースからジンが流れ出てくるという仕組みになっていたそうです。

なお、この手法を考え出したのはジン密造人だったダドリー・ブラッドストリート氏という御仁。氏が看板のモチーフを猫にしたのはなぜだったのでしょう?犬には警察のイメージがあるから?それとも彼自身が犬より猫派だったから?…残念ながら真相は闇の中です。

とにもかくにもロンドン市内に瞬く間に広がったこの「猫ジン販売機」から、甘みを足したジンそのものを「オールドトム・ジン」と呼ぶようになり、これは19世紀前半まで一大ブームを起こしつつ人々に愛されました。しかし1830年にイーニアス・コフィー氏によって発明された連続式蒸留機により、ジンは転機を迎えます。そう、ロンドン市民が熱狂的に歓迎した「スムーズで雑味のないジン」、つまり「ロンドンドライ・ジン」という新たな味わいのジンが誕生したのです。

ロンドンドライ・ジンはイギリスはもとよりアメリカでも熱烈に受け入れられ、その結果古参のオールドトム・ジンは主にトムコリンズというカクテルに使われるマイナーなタイプとなってしまいました。 しかし「ジンクス オールドトム・ジン」はそんなマイナーなポジションに甘んじるジンではありません!「衝撃的なほどのオレンジフレーバー」というキャッチフレーズの通り、甘さを抑えつつ良質なオレンジやレモンピールを惜しみなく使用しているため、目が覚めるほどフレッシュなシトラスのフレーバーを存分に堪能することができるのです。

その圧倒的なフレーバーは本来のオールドトム・ジンとしてだけでなく、オレンジジンやレモンジンとしても使えるほどの迫力あるもの。たとえば果汁100%のリンゴジュースとジンクスを3対1ほどの割合で氷を入れたタンブラーに注ぎ、軽く混ぜればオレンジとリンゴの風味がたまらないカクテルが完成。こちらは実に飲みやすく、ジントニック好きの方であればもれなく気に入っていただけるのでは、という味わいです。また、やはり3対1ほどの割合で無糖紅茶で割ってみれば、紅茶のちょっとした渋みと後味のすっきり感が甘さ控えめのジンクスとバランス良くマッチし、大人の味わいが楽しめるはず。アイスティーだけでなく、温かい紅茶に少し加えてもより香りが立ち上るので、オレンジの香りを思う存分満喫できるでしょう。

このように「RTM(Ready To Mix=混ぜるだけでカクテルに!)」アイテムとしてバーだけでなくご家庭でも愛飲されているジンクスですが、実はストレートでそのまま味わっていただくのもおすすめなのです。すでにほど良い甘みが加えられ完成された味わいのジンクスは、ちょっと冷やせば口当たりもより滑らかになり、常温のオンザロックで味わっていただくと繊細なアロマに思わず笑みがこぼれてしまうはず。

カクテルのベースというイメージが強いジンというお酒ですが、混ぜても良し、そのままでも良しのジンクス オールドトム・ジンは、まさに「ジン界の万能選手」といった傑物。 見た目はのほほんとした表情のトムキャット・ジンクス君、文字通り「猫をかぶっている」だけなのかも…?

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ANGE GIARD CALVADOS APPLE 100% CHALLES・APPLE 50% PEAR 50% LECROSNIER

まるでワイン並みの情報量!? 生産者もセパ―ジュも、ディティール満載のカルバドス!

ノルマンディー地方の地酒であり、農民が自分たちのために造って飲むものだったカルバドス。彼らにとってリンゴは食生活に欠かせないもので、普段の食用として、またジュースやシードルなどの飲み物に加工したり、蒸留してカルバドスを造ったりして活用していました。

現在、ほとんどのカルバドスは専業メーカーが製造を行っていますが、地元農家の人々が造った本物の自家製カルバドスを買い付け、ブレンドすることなくそのまま瓶詰を行っているのが「アンジュジアール」です。

リンゴの圧搾機や年代物の器具を使って造られた自家製カルバドスはノルマンディーの風土を存分に感じさせてくれる素朴な味わいが大きな特徴となっており、まさに「農民のための地酒」という名に相応しい原点的作品と言えるでしょう。

とは言えリンゴや洋ナシから造られるこの郷土感あふれるブランデー、あまり一般の方に慣れ親しまれていないというのも残念ながら事実です。そこでもっと多くの方々に、より気軽にカルバドスを楽しんでもらえないかと考え、アンジュジアールが一念発起し開発したのが今回ご紹介する「セパージュ・カルバドス」二種になります。

このセパージュ・カルバドスは「これまでほとんどカルバドスを飲んだことのない方」にこそ強くおすすめしたい、そんなコンセプトで造られた全く新しいスタイルのもの。日本でもトレーサビリティ(生産や流通の履歴を辿ることが出来ること)が重視されるようになって久しくなりますが、国内流通の多くのカルバドスはペイドージュやドンフロンテといったAOCを明記しているだけで、実際にリンゴと洋ナシがどれぐらいの比率で含まれているのかについてまでは記されていません。しかしセパージュ・カルバドスは裏ラベルに実際の造り手が記載され、原料となるリンゴと洋ナシの比率についてもしっかりと明記されています。さらにこのカルバドスは単に「セパージュ(本来はワインにおけるブドウ品種の割合を指す用語)」が分かるということだけではなく、一般のお客様が手に取った際に「このお酒はリンゴと洋ナシで造られているのだ」ということが一目で分かることを念頭に置いて開発されているのです。

無添加・無着色にこだわり、一般のお客様に広く受け入れていただきやすい価格帯を実現する ―― さまざまに熟考を重ねた結果、生み出されたのが「セパージュ・カルバドス アップル 100%」と「セパージュ・カルバドス アップル 50% ペア50%」でした。

「セパージュ・カルバドス アップル 100%」は昔からの製法を頑なに守り続ける生産者、ローラン・シャル氏の手によるもので、冷凍庫で冷やしてそのままでも楽しめますが、ソーダやトニックで割ってもう少し気軽に楽しんでいただきたいカルバドス。若いながらもフレッシュで力強いリンゴの風味がたっぷりと楽しめます。

「セパージュ・カルバドス アップル 50% ペア50%」は洋ナシを50%加えることにより、柔らかで繊細な甘みをもつ仕上がりになっている点にご注目いただきたい一本。18世紀から続く美しい「丘の上の荘園」を大切に受け継いでいるドメーヌ・レクロニエ氏が丁寧に造り上げたこちらは、少し冷やしてロックやシャンパーニュ割りでも美味しくいただけるはず。プロの方には、洋ナシの比率が上がるとどのように味わいが変化してゆくのか実際に試してみていただきたいのもポイントです。そう、ちょっと工夫してジャックローズやブランデーベースのカクテルに応用するのも面白いかもしれません。

リンゴと洋ナシの比率や品種が判明している稀少なアイテムゆえ「セパージュ・カルバドス」と名付けられたカルバドス二種。

休日の昼下がりにシャンパーニュで割ってラグジュアリーなひと時を、また皆がにぎやかに集まるパーティーならば、ソーダやトニックウォーター割りでカジュアルかつスペシャルな雰囲気を演出! ぜひ「二種類セット」でご入手いただきたい、由緒正しきカルバドスです!

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SAINT JAMES VSOP・XO

最優秀賞受賞のラム!審査員を感服させた卓抜VSOPと、ベストと称さるXO!

マルティニーク・ラムの中でも豊富なアイテム数を誇り、世界的な大会で金賞を多数受賞しているセント・ジェームス蒸留所。本場マルティニークでも大きなシェアを占めるセント・ジェームスの作品郡の中から、今回はセラーマスターが「セント・ジェームスの真髄」と呼ぶ「セント・ジェームス VSOP」、そして同じく「長熟アグリコールラムのベストキュベ」と太鼓判を押す「セント・ジェームス XO」の2アイテムをご紹介いたしましょう。

ところで「VSOP」「XO」という表記を見てすぐにその等級がお分かりになるという方は、かなりラムを飲み慣れていらっしゃるのではないでしょうか。むしろこれらの表記はコニャックなどブランデーの方が馴染みがある、という向きも多いかもしれません。

そう、コニャックやアルマニャックの故郷・フランスにルーツを持つ「サトウキビのブランデー」フレンチ・クレオール・ラムだからこそ、これらブランデーの等級を示す表記をラムにも使っているのです。

ちなみにVSOPとXO、どちらの等級が高いかというと「XO(Extra Old=最低6年熟成)」の方が上級になります。対するVSOP (Very Superior Old Pale)は「最低4年熟成」が条件となっており、高級ブランデーの代名詞といえばVSOP、と思っていた方にとっては意外かもしれませんね。

さて、まずご紹介する「セント・ジェームス VSOP」は「スピリッツビジネスマスターズ2021アグリコールエイジドラム部門」で最優秀賞となる「マスター」を受賞した、傑作にして大注目作!exバーボン樽とニューアメリカンオーク樽で4~5年熟成させた原酒をブレンドしており、カカオやスパイス、砂糖漬けフルーツ、そしてフィニッシュにはウッディでバニラを感じさせる香りが楽しめます。味わいはといえば完璧に調和したウッディさとロースト香、バニラとシナモンのようなスパイスのニュアンスが心地良く口内を満たし、スピリッツビジネスマスターズの審査員も「このセント・ジェームス VSOPのクオリティは頭一つ抜けた感がある。大胆でありながらエレガントで、甘いアーモンドの香りと非常に熟成した要素が共存している」と大いに賞賛しています。

もう一つの「セント・ジェームス XO」は厳選されたスモールサイズのexバーボンホワイトオーク樽で6年以上熟成させた原酒をブレンドしたもの。たっぷりとしたロースト香が微かなシガーボックスの香りと混ざり合い、口に含むとモカやコーヒーのロースト香に繊細なスパイスの奥行きを持ったプルーンやイチジクなどのフルーツが感じられ、程よく長い余韻が続きます。そのままでももちろん、マンハッタンのようなカクテルのベースに使っていただくのもおすすめです。

セント・ジェームスならではのユニークなスクエアボトルを満たす、二つのエイジング・ラム…いずれ劣らぬ優品です!

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CALVADOS 7YO BOURBON FINISH SKULL BOTTLE・BARBADOS RUM VO BOURBON FINISH SKULL BOTTLE

お酒をくれなきゃ悪戯しちゃう?スカルボトルで大人のハロウィン、メキシコ流のメメント・モリにも!

暦はもう10月、街中にもハロウィンのディスプレイがちらほらと見られるようになってきましたが、今回ご紹介するのはそんなハロウィンパーティーにぴったりの「スカルボトル」。フランス・ノルマンディーの地より良質なカルバドスをリリースしているアンジュジアール社から、カルバドスとバルバドスラムを超有名バーボンの樽で追熟した新作が、手乗りサイズのどくろ型ボトルに詰められて届きました!

いまやタピオカドリンクやジュースの容器にも使われるほど市民権を得ているスカルというモチーフ。しかしスカルボトルの元祖といえば、高いアルコール度数も相まって強烈な印象を与えてくる「テキーラ」が入ったものを思い出す方が多いのではないでしょうか。

そう、テキーラの生まれ故郷であるメキシコでは、ハロウィン直後の11月1日から2日に国民的行事となる「死者の日」という祝日があり、このお祭りではあの世から戻ってきた死者の魂を歓迎するためにさまざまなカラベラ(どくろ)モチーフの飾りやお菓子を用意して、死者との交流を楽しむのです。そしてそこに並ぶのはおどろおどろしい雰囲気のものではなく、歌ったり踊ったり陽気に死後の生活を満喫している明るさ弾けるガイコツたち。さらにメキシコの人々は自らもガイコツのメイクや扮装をして街を練り歩き、墓地に集まってはライブやおしゃべりを楽しむのだといいます。

死を忌み畏れる対象としてではなく、生とひと繋がりになった親しみのあるものとして捉えるその姿勢…風土の違いこそあれ、日本との著しい差異には考えさせられてしまいます。ハロウィンは十分定着した感がある我が国ですが、死者の日のように「死と隣り合う」行事ももっと身近になってよいのではないでしょうか。

さて、今回入荷したスカルボトルに詰められているカルバドス、実はハロウィンにうってつけの乾杯酒といえるのです。というのもハロウィンの起源のひとつにローマの果樹の女神ポーモーナを讃える豊穣祭があり、ポーモーナのシンボルがリンゴだったことから、ヨーロッパのハロウィンではリンゴを飾ったり食べたりすることが一般的なのです。ハロウィンといえばカボチャ一辺倒な感のある日本では、これはちょっと意外な事実かもしれません。

7年熟成のカルバドスは原酒の個性をより際立たせるため、軽やかな味わいが特長の「世界で一番売れているバーボン」の樽でフィニッシュをかけたもの。そしてラム発祥の地といわれる世界的に有名な島「バルバドス」で造られたラムの方も、イギリス領系ラムには珍しいフルーティさとマッチするようバーボンの中でもやさしい味わいが印象的な、全米最古の歴史を持つ「水牛がトレードマークのバーボン」樽でフィニッシュをかけました。

どちらも国旗をイメージしたラベルとスカルボトルの組み合わせが最高にユニークで、バーカウンターでもおうちのキャビネットでもとびきり映えること請け合い。中身の濃い琥珀色もハロウィンカラーと実にしっくり馴染みます! スカルボトルを傍らに美味しいお酒で話を弾ませれば、お酒好きの故人も密かにその輪に加わってくれるに違いありません。

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KINGSBURY AUTHENTIC RUM DEMERARA ENMORE 30YO

いまだ現役稼働中!古参のポットスチルが生んだ “オーセンティック”なガイアナラム!

20年の時を経て昨年末復活を遂げたキングスバリー社「オーセンティック ラム」。これまでも「ダイアモンド 2003 18年」「ワーシーパーク 2006 15年」などの作品をご紹介するたびに大変ご好評いただいてきた大人気シリーズですが、今回待望の新作は、数々の伝説を生んだ「エンモア 1990 30年」です!

各地の名だたるラムバーもプライベートボトルとしてリリースしてきた人気銘柄「エンモア」。こちらは19世紀初頭、エドワード・ヘンリー・ポッター氏が父親の綿花農園を受け継ぎ、その地所を改変して設立した「エンモア製糖工場」に併設されたラム蒸留所の商標でした。そしてエンモアの代名詞とも言えるのが、オリジナルの蒸留器となる「木製のカフェ式連続式蒸留機(カフェスチル)」。カフェスチルとは1830年頃にアイルランド人のイーニアス・カフェ氏によって発明され、特許(パテント)を取得したことで「パテントスチル」とも呼ばれる連続式蒸留機の一種ですが、エンモアはCoffey & Co.社が公開した設計図を使い、カフェ氏による最初のスチルと全く同じデザインの蒸留器を1880年に造り上げたのです。

1780年には300 以上の蒸留所が独自のラムを生産していた英国領ガイアナでしたが、効率化のためこれらは合併と閉鎖を繰り返し、1942年には統合された九つの蒸留所――アルビオン、ブレアモント、ラ・ボン・インテンション、スケルドン、ウィットブルグ、ベルサイユ、エンモア、ダイアモンド、ポートモーラント――だけが生産を続けていました。さらに1966年にガイアナが英国連邦加盟国として独立すると、政府は10年後にほとんどの蒸留所を閉鎖してラム生産を国有化。エンモアはたった三つ残った蒸留所のうちの一つとなり、1978年に閉鎖されたベルサイユ蒸留所の木製ポットスチルを譲り受けました。しかしそのエンモアも1994年には同じく閉鎖、オリジナルのカフェスチルとベルサイユの木製ポットスチルは、最終的に統合されガイアナ唯一の蒸留所となったダイアモンド蒸留所に移設されることとなったのです。

こうしてただ一ヶ所残ったダイアモンド蒸留所には、閉業した各蒸留所から移管されたさまざまな蒸留器、設備、専門知識が一極集中の様相で揃うこととなりました。しかし経験を積んだ職人たちが新しい蒸留所に移るというのは容易に理解できるとしても、蒸留器のような大きな設備をわざわざ移設するというのはちょっと釈然としない…と思われる方もいらっしゃるかもしれません。どうせならこの機会に古い蒸留器は廃棄して、新しい蒸留器を作ってしまっては?という考えがあってもおかしくないように思われます。

しかしながらラムやウイスキーの蒸留器の形というのは出来上がるお酒の個性に大いに関わってくるもので、釜(胴体)やネックの形状、また蒸留器自体のサイズによって風味やボディに顕著な違いが出てくるのが実際のところ。高品質なラムは職人の磨かれた技だけでなく、名作と呼んで良い唯一無二の蒸留器の存在あってこそ成るもので、おいそれとこれらを処分してしまうことなどもっての外と言えるのです。

ダイアモンド蒸留所を管理するデメララ・ディスティラーズ社も、手間と労力をかけエンモアの名蒸留器を大切に受け継ぎ、貴重な遺産の保存と次世代への継承に尽力しました。そして1990年初頭には株所有による政府の介入からも解放され、今日ではガイアナのノンアルコール飲料の大手メーカーとしてペプシやセブンアップなど国際ブランドの製造販売を担うまでの一大企業に成長しています。

さて今回ご紹介する「キングスバリー オーセンティック ラム エンモア 1990 30年」は、上述の「ベルサイユからエンモアに移設された木製ポットスチル」で蒸留されたもの。これを1991年から英国で樽熟成させ、2021年にシングルカスク・カスクストレングスでボトリングしたアイテムです。

国内最小クラスの蒸留所だったベルサイユですが、そのラムはガイアナで最初に熟成されたものの一つであり、1867年にパリで開催された万国博覧会をはじめとするヨーロッパのさまざまな博覧会でも展示されたのだそう。そして250年以上の歴史を誇る同蒸留所の木製ポットスチルはガイアナ原産のグリーンハート材(その強度から造船に使用されることもある)で作られており、この天然木のボディと銅製のスワンネックの組み合わせこそ、堅牢で非常に風味豊かな芳香を放つデメラララムの特徴を生み出すのに理想的だと評されています。

そしてベルサイユの閉鎖に伴いエンモアに移されたこの木製ポットスチルは1993 年にウィットブルグに再び移設、そして2000 年のウィットブルグ閉鎖の時点で再度ダイアモンド蒸留所に移されました。このような幾度にわたる移設の歴史から見ても、いかにこの蒸留器が珍重されていたかがお分かりいただけるかと思います。

ウイスキーラバーにも好まれる華やかな香りと複雑さ、長くなめらかな余韻がとても魅力的な「伝説的ビンテージ1990」。価格高騰が著しいエンモアという銘柄ですが、今回の入荷も限定数での貴重なものになっております。

「原酒の個性を味わう」というオーセンティック ラムシリーズのコンセプト、この一本で存分に体感いただけるはずです!

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LOUIS DE LAURISTON AC CALVADOS 21YO FOR JIS

息呑むほどのハイプルーフ!リンゴだけで造られる「樽出し59度」のカルバドス!

カルバドス界の名士として名高いクールドリヨン社のオーナー、クリスチャン・ドルーアン氏。そして同氏のプライベートストックを瓶詰めしたカルバドスとして、その稀少性と質の高さが広く認められているのが「ローリストン」です。

各国のコンテストにおいて数え切れないほど様々な賞を獲得するなど、圧倒的な高評価を得ているカルバドスのパイオニア的生産者のローリストンですが、同社の代名詞となっているのは特に洋ナシの含有率が多いACドンフロンテ産のものとビンテージ品。これらは非常に柔らかく繊細で優しい甘さが特徴で、優雅で深みのある味わいは多くのファンから絶大な支持を得ています。 今回はそんなローリストンより、数ある樽から厳選した「シングルカスク」の「カスクストレングス」という、日本市場限定カスク「ローリストン AC カルバドス 21年 FOR JIS」が届きました! 上述のようにACドンフロンテで名を馳せるローリストンですが、こちらの新アイテムはACカルバドス産、リンゴ100%で造られたもの。そして注目いただきたいのは「樽出し59度」というハイプルーフ(高アルコール度数)!

高いアルコール度数のお酒というと、まずウォッカや中国の白酒が浮かびますが、実は有名どころのウォッカの平均的なアルコール度数は40度前後、白酒も50~65度ほどと飛び抜けた数値ではないのです。先日ご紹介した、同じくリンゴ100%から成るアンジュジアール社の「セパージュ・カルバドス アップル 100%」が40度、同じブランデーであるポールジローのコニャックもほとんどが40度ちょっと、そしてJISきってのハイプルーフ・ジンであるピムリコジンでもその度数が57度であることを鑑みると、本アイテムの59度という数値の只ならなさが実感いただけるかと思います。

そしてこのハイプルーフがしっかりした骨格の支えとなっているためにカルバドスの香味がくっきりと伸び、リンゴ100%からなる香り立ちはカンフル、ムスク、ランシオ、フローラルなどが生き生きと複雑に感じられる非常に良質で華やかなものになっています。さらにここへ素晴らしい酸味やココナッツの風味も加わり、新たなローリストンの魅力を存分に楽しむことができるでしょう。

寒さが厳しくなるにつれ「味わい深さが身に染みる」としみじみ思わせてくれるのがカルバドスというお酒。大きなグラスで時間をかけながら、芳しい香りと繊細で優雅な味わいを楽しむのはこれからのシーズンが最適なのです。ストレートはもちろんのこと、ホットカルバドスにしてシナモンスティックを添える、そんな飲み方もまた魅力的。ちなみに鴨などのお肉の調理やデザートを作る際に用いられる技法「フランベ」用のお酒として使われることも多いカルバドスですが、香り高いこちらの21年ものでフランベすればどんな食材も見る間に美味しく変身してしまいそう…さすがにそれはちょっと贅沢過ぎる使い方でしょうか。

ともあれ、類まれな個性がストレートに堪能できる日本市場限定のスペシャルボトルは「150本」のみの限定入荷。カルバドスの旬はまさに今これから…どうか皆さま、お見逃しなきよう!

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CHATEAU DU BREUIL LEGENDE

そして伝説へ…果実はオーブに姿を変えて、偉大な王座を継承する。

シャトードブルイユはカルバドス最良の産地といわれるノルマンディー・ペイドージュ地方にあるシャトー。小規模ながらも由緒あるシャトーは重要文化財級の豪奢な建物で、格調高いテイスティングルームはこのシャトーが受け継いできた歴史を感じさせる空気に満ちあふれています。

シャトードブルイユでは数百種類のリンゴを使ってカルバドスを生産していますが、特筆すべきなのは「頑なに昔ながらの製法を守り、じっくりと時間をかけて蒸留された原酒を選び抜いたリムーザンやトロンセのオーク樽に入れて熟成させる」というこだわりを変わらずに持ち続けているということ。その厳然たる姿勢に感銘を受けた愛好者は、いまも日々増え続けています。

加えて最近はカルバドスだけでなく、ラムの「エクスプローラー」やシングルモルトの「ル ブルイユ」などさまざまなジャンルの商品を意欲的に発売し、ますます注目を集めているシャトードブルイユですが、今回はかつての長熟アイテム「ロイヤル」の後継品にあたる新たな長期熟成カルバドス「レジャンド」が発表となりました!

シャトードブルイユ ロイヤルといえば同社でも秘蔵中の秘蔵酒として知られており、セラーマスターが試飲を重ねた上で、とてつもない可能性を秘めた味をもった樽だけを別のセラーに移し、他の樽とは切り離して造るという究極のカルバドス。シャトー内でも“GREAT MASTER”と呼ばれ、ブレンディングに使用される樽は最も若い樽でも30年以上の熟成を経ているという極めつけの古酒です。

そんなプレミアムカルバドスの後継品というのですから、皆さまも期待を膨らませずにはいられないはず!フランス語で「伝説」の意味を持つ非凡な名を冠していることからも、シャトーの並々ならぬ自信がうかがえるアイテムだと言えるでしょう。

その自信を裏付けるように、ブレンディングに使われる原酒は最低でも20年熟成という長熟もの。さらにフレンチオーク樽に詰められた原酒から、このレジャンドに使う分を密かに切り離し熟成させたというこだわりからも、こちらが文字どおり「セラーマスター秘蔵のカルバドス」であることがお分かりいただけるはずです。

ブラウンカラーにマホガニーのハイライトが輝くカルバドスからは、焼きリンゴやタルトタタン、シードル、ハチミツ、ヒマラヤ杉と重みのあるタバコのニュアンスを持つ香りが立ち上り、アタックはしなやかそのもの。モカ、シナモン、ナツメグなどのスパイスの風味が樽の特徴を顕著に感じさせ、滑らかなタンニンとリコリスを感じる長いフィニッシュで飲む者を魅了します。

食後酒としてそのまま楽しむのはもちろん、コーヒーと共に味わうのも良し、甘いデザートと合わせるのも良しの懐深い一本です。

ちなみにファーストバッチの生産は1400本。そのうち日本に入荷したのは、わずか120本ほど…。芳醇な樽香とスパイシーさを兼ね備えた唯一無二のカルバドスとして生み出された、シャトードブルイユ渾身の名品。シャトーが確かな自信をもってお届けする長期熟成品だけに、このチャンスを見逃すのは惜しすぎるというもの…日本市場から姿を消してしまう前に、ぜひご入手ください!

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DAMOISEAU VSOP

一枚岩でのラム造り――苦楽を共にし一家で築いた、グアダループの一大ブランド!

カリブ海に浮かぶフランス領の群島、グアダループ。その中心となる最大の島が、西側のバス・テール島と東側のグランデ・テール島から成るグアダループ島です。珊瑚礁に囲まれ、白色の海岸が多いグランデ・テールの海岸にはリゾートホテルが立ち並び観光客で賑わっていますが、この島の東にあるレ・ムル村に居を構え、島内シェア50%を超えるというラム蒸留所が「ダモワゾー」です。

1942年、グルノーブル電気技術研究所とカトリック芸術工芸学校を卒業したロジェ・ダモワゾー氏は友人の公証人ティオンヴィル氏の助けを借りて、当時荒廃の状況にあったベルビュー蒸留所を無資金で購入することを決意。そしてそれに伴う大きな借金を返すために砂糖の生産を再開し、お菓子やジャムを作り始めました。しかしその後すぐに生産の中心となったのがラムだったのです。

1968年にはロジェ・ダモワゾー・ジュニア氏が父の後を継ぎ、その後彼の息子たちも仕事に加わり蒸留所をビジネスとして成功させるために尽力。1995年、エルヴェ・ダモワゾー氏が家業を継いで会長となり、エルヴェ氏の弟で1978年からマスター・ディスティラーを務めていたジャン・リュック氏が生産を一手に担う形となりました。

ジャン・リュック氏が入社した当時、サトウキビ置き場は土の床で、計量もカートの重さを量るだけだったのだそう。地下に設置されていたサトウキビを運ぶコンベアは手作業で傾けており、蒸気機関で動く粉砕機はごく旧式のもの。また発酵タンクはロジャー・ジュニア氏が中古で買ってきた黒い板金製のもので、防水性を高めるために板を溶接するのに時間がかかっただけでなく、その後も24時間365日のあいだ、水漏れがないか昼も夜も監視しなければならなかったのだとか。さらに粉砕機と蒸留に必要な蒸気を確保するためのボイラーも中古で購入した使い古しで、一日に2トン以上の薪を燃やす必要があったのだそうです。

また電気の供給が無かった蒸留所では18kVAのリスター発電機を使い手作業でボトリングを行っていましたが、念願の送電網への接続が叶うやいなやジャン・リュック氏は電気モーターで動く粉砕機と中古の半自動ボトル充填機を導入。ボトルがレールから外れるのを止めるのに「サッカー選手並みの俊敏性」が求められたそうですが、その分販売量は右肩上がりに増えてゆきました。

その後順調にシェアを増やしていったダモワゾーでしたが、1989年のサイクロン「ヒューゴ」による打撃で蒸留所は操業停止の窮地に。ボトリングに使っていた小屋は屋根を失い、電力供給もストップしてしまいました。しかし一家は吹き飛ばされた金属片を拾ってきて屋根を修理し、道路に散乱していた電線を引き揚げて家屋や蒸留所、そして唯一残っていた倉庫に電気をつなげるよう奮闘しました。そう、まさに家族一丸となって蒸留所の再建に打ち込んだのです。

そして1994年頃を境に現地でのラム販売規制が撤廃されると、ジャン・リュック氏いわく「ラムはもう売りたい放題になった」のだとか。この波に乗ったダモワゾーは蒸留所を徐々に近代化しながら最初の貯蔵・熟成施設を設置、ジャン・リュック氏は弟のレジス氏(2004年に逝去)と共に倉庫を拡張し、毎時4,500本もの性能を誇る新しいボトル充填機も導入したのです。

こうして今や年間300万リットルのラムを生産するグアドループ島最大規模の企業で、島内シェアは断トツ首位、パリ農作物コンクールでは20以上のメダルを受賞、世界20ヶ国以上で愛飲されるトップブランドとなったダモワゾーですが、こちらはJISでも取り扱い歴がもっとも古い老舗ブランドになります。

グアダループ島の象徴とも言えるダモワゾーのアグリコール・ラムの評判は高く、ホワイトラムもオールドラムもグランデ・テールのテロワール(土壌)を如実に反映した、太陽の光を感じられるような作品に仕上がったもの。今回はそのラインナップの中から長期欠品中だった「ダモワゾー VSOP」が新ラベルで待望の再入荷を果たしました!

こちらのVOSPは容量180リットルの小さなオーク樽で4年以上熟成された原酒のみで構成。バランスが良く汎用性の高い一本としてアグリコール・ラム入門に最適な秀作となっており、サトウキビの生育を促す豊富な日照量に恵まれた微気候と、天然の石灰を多く含む土壌が強みであるダモワゾーの特長をしっかりと味わうことができます。

「我々の世代はよく働き、勇気を失わなかったんだ」と奮迅の過去を振り返るジャン・リュック氏。「私と弟のレギスは、成功することを夢見ながらただひたすら前進するだけだった。夜には電気もエアコンもない芝生に寝転んで、空を眺めながらやりたいこと、手に入れたいもの、それ以上のことを語り合ったものさ」と感慨深く語る氏の言葉からは、遠くグアダループの地に立った風雲の志をひしひしと感じます。

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VALDESPINO SOLERA 1842

この甘みのバランス感、非凡なり…!有名評論家のお墨付き、バルデスピノの傑作オロロソ!

時は1264年。キリスト教徒のレコンキスタ(国土回復運動)に伴い、カスティーリャ王アルフォンソ10世と共にイスラム教徒であるムーア人と戦った 24 人の騎士団のうちの一人が、アルフォンソ・バルデスピノ氏でした。アルフォンソ10 世はヘレス市の奪還成功の褒賞として騎士たちにヘレスの土地を与え、バルデスピノ氏はここでワイン造りを始めたのです。

以来、何世代にもわたる家族経営によって育まれた個性と品質、最高級のオリジナリティと呼ぶにふさわしい芳香と味わいを持ち、移り行く時の流れの中でも変わることのないクオリティを保ち続けているのが「バルデスピノ」のシェリーです。

今回ご紹介するのは、同社の作品の中でも絶妙な甘さのバランスが秀逸な「ソレラ1842」。パロミノフィノ種を使い、20年以上も熟成されたミディアムスイートのオロロソとなる本作ですが、その上品な甘みはペドロヒメネス種によるもの。パロミノフィノにペドロヒメネスをブレンドした上でさらに熟成させるので、瓶詰め直前にブレンドするよりも味わいが統合され、甘みもよりバランス感に長けた自然なものになるのです。

ところでこちらのソレラ1842、「1842とは何を指しているのか?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。これは文字どおり「バルデスピノのソレラシステムが開始されたのが1842年」であることに由来しているのです。ちなみにソレラ1842の兄弟分とも言えるオロロソタイプの「ドンゴンザロ(Don Gonzalo)」はスペイン語で「ゴンザロ卿」という意味を持ちます。「Don」はスペイン語圏で男性の名の前につける敬称で、ドン・キホーテやドン・ファンなどでもおなじみですね。

さらに同社のアモンティリャードタイプとなる「ティオディエゴ(Tio Diego)」は「ディエゴおじさん」、クリームタイプの「イザベラ クリーム(Isabela Cream)」は「イザベラさん」という女性の名の意味になっています。残念ながらこれらのゴンザロ、ディエゴ、イザベラ各氏がバルデスピノ家にどう関わっていた人物なのかは今や知る由がありませんが、間違いなく一家にとって重要なキーパーソンだったのでしょう。

バルデスピノのシェリー名は人物だけに因むものではありません。フィノの「イノセンテ(Inocente)」は「無垢」、マンサニージャの「デリシオーサ(Deliciosa)」は「美味な、魅力的な」、モスカテルの「プロメサ(Promesa)」は「約束、誓い」という具合に、なかなか深遠な名称になっているのです。なおペドロヒメネスの「エルカンダド(El Candado)」は「南京錠」の意味になりますが、これはペドロヒメネスのシェリーがとても美味しく人気があったため、主である貴族は家臣がこっそり拝借するのを防ぐため、樽を鎖で巻いて施錠していたというエピソードにちなんでいるのだとか。主の目を盗んででも飲みたい家臣vs鍵をかけてでも独り占めしたい貴族…どれほどまでに美味なるシェリーなのかが実感できる逸話ですね。

ナッティでナツメヤシ、レーズンのアロマ、リコリスの風味があり、口内にいつまでもオロロソの風味が心地良く残る滑らかなフルボディタイプの「ソレラ1842」。有名なワイン評論家であるジャンシス・ロビンソン氏いわく「ラベルにはミディアムスイートと記載されているが、実際にはハムやチーズと一緒に、または寒い冬の日の食前酒として楽しく飲むことができる。バランスが良く、非常にリッチなアタックとドライなフィニッシュが印象的なシェリーである」とのこと。

使いやすい500mlサイズへリニューアルされたこともあり、フルボトルは消費に時間がかかりそう…と躊躇されていた方も、ぜひこの冬、お手に取っていただければと思います。

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