毅然

Kizen

#031~はこちらです。

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#024

CHATEAU DU BREUIL 30YO IN WOODEN BOX

絶句のカルバドス ー 30年間眠り続けた、情熱の花は今ひらく。

シャトードブルイユは、ノルマンディーで唯一シャトーを有するカルバドスメーカーです。

ノルマンディーで最もリンゴ栽培に適した地域と崇められるペイドージュ。その約束の地に建てられた小さくも由緒あるシャトーは重要文化財級の豪奢な建物で、外壁の美しいピンク色のタイルが目を引くもの。また、格調高いテイスティングルームは、このシャトーが受け継いできた歴史を十分に感じさせる空気に満ちています。

創業者のフィリップ・ビゾワール氏はカルバドスの名門一族に生まれましたが、大手では成し得ない「至高のカルバドス」を造るべく一念発起し、1954年にシャトードブルイユ社を設立しました。酒そのものの品質はもちろん、外見にもこだわり、最高の作品を完成させるため採算をも度外視したビゾワール氏でしたが、熱意のあまり資金繰りに窮することになり、1988年には会社を手放さざるを得なくなってしまいます。

しかしその後、ビゾワール氏が手掛けた長首型のユニークな瓶と高い品質のカルバドスは新オーナーの下で新たに脚光を浴びることになり、フランス国内はもとより、海外の一流ホテルやレストランで最も愛されるカルバドスとなったのです。

氏の思いは歴代の優れたセラーマスターによって脈々と受け継がれており、2021年の現在においても昔ながらの製法を守り、手間暇かけて蒸留された原酒は選り抜きの樽で眠らされ、ボトリングを待ちます。

そして「シャトードブルイユ 30年」は、このブルイユの歴史を真っ向から体現したアイテム。

アンティークの木製家具を思わせるような深い琥珀色は、一目見ただけで引き込まれてしまいそうな奥行きのあるもの。グラスを傾ければシナモン、砂糖漬けのフルーツ、オークなどが香り立ち、それは次第に蜜蝋ワックスやタルトタタンのような印象へと移行。終盤は杉片、オレンジピール、タバコ葉の心地よい苦みへと収束します。また、口内では焙煎したコーヒー豆、ダークチョコレート、キャラメル、アーモンド、リコリスが終始ふくよかに感じられ、その力強さはフィニッシュまでとどまることなく続きます。

フランスのとあるソムリエいわく「グラスに注いだ時のみずみずしい青リンゴのような新鮮な香りと口に含んだ時の奥深いコクは、30年以上樽の中で寝かされていたものとは思えない衝撃。果たして他にこんな味わいを持つカルバドスはあるのだろうか」とのこと。そう、もはやこの一本は「カルバドスが持ちうるすべての香り」を内包しているといっても過言ではないのです。

初めてこの酒を口にした飲み手は、その絶妙に黙するか、嘆息を漏らすしかない至高のカルバドス…ビゾワール氏の純粋な情熱と理想が、ボトルの中で花開いたかのようです。

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NEW GROVE 2004 VILLE BAGUE

忖度、配慮、一切禁止!超難関コンペを勝ち抜いた、気鋭のラムメーカーが見せる夢。

2020年、世界17ヵ国、40人のスペシャリストによる「オールリモート&ブラインドテイスティング」で開催されたラムのコンペ「インターナショナル・シュガーケーン・スピリッツアワード2020(ISSA)」。このコンペは世界中の生産者、ブランド、独立したボトラーを集め、その中から特に卓越した作品を発掘し、メディアを通じて国際的にアピールすることで世界中のシュガーケーン・スピリッツの成長を促進することを目的に企画されました。審査員は世界各国から集められたスピリッツ専門家たち。彼らがたっぷり30日間もかけサンプルを試飲して審査を行うのですが、この試飲は非常にユニークな「トリプルブラインド・テイスティング」という形で行われます。すなわち「審査員はその酒類カテゴリを除き、どのアイテムを味わうか全く知らされない」「試飲後も採点後も、そのアイテムの詳細は知らされない」「サンプルにはすべて異なるコードが付けられているため、このコードを元に審査員同士がリモートで議論することもできない」という厳しい制約があるのです。

一流の審査員とて生身の人間、事前情報によって評価にブレが生じてしまうことも皆無ではないでしょう。そうしたバイアスを取り除き、「純然たる評価」に基づいて選考を行い、しかるべき賞を授与するよう発足したのがISSAなのです。

そしてそのISSAで、最高の栄誉となる賞 “カンヌドール”を受賞したのが、今回ご紹介する「ニュー グローブ」社による渾身の作品「ニュー グローブ エモーション1969」だったのです!

ラム業界でも最新の試みとなるコンペの、各カテゴリーにおけるファイナリストの中から選ばれた最高のシュガーケーン・スピリッツにのみ授与される最優秀賞である“カンヌドール”。その栄誉に与った「エモーション1969」は、「ニューグローブの比肩なき伝統を、磨き抜かれた技巧と留まることのない情熱によって完璧に表現した作品」とのこと。そう、まさに今、世界的に大注目を集めているラムが「ニュー グローブ」なのです!

今回はそのニュー グローブから、モーリシャス島内の同社にゆかりのある地名をつけたビンテージ3部作の第1弾となる「ニュー グローブ 2004 ヴィルバーギュ」をご紹介いたします。

モーリシャス島パンプルムースにあるドメーヌ・ドゥ・ラ・ヴィルバーギュ(Ville Bague)は、1740年に島で最初の製糖工場が出来た場所。1742年には島で最初のラム蒸留所が誕生し、ピエール・シャルル・アレル氏が蒸留技術の改善やラム酒製造に関する法整備に尽力、今はアレル氏の子孫がニュー グローブの生産者として古くからの伝統を守り、ラムの蒸留を続けています。

蒸留は2004年、樽詰め時の度数は65%。ニューフレンチオークとexコニャックカスクで16年熟成された後、50%までゆっくり加水し、2020年に45%で瓶詰めされました。

ノンチルフィルター・ノンカラリング、加糖や添加物は一切ないというこちらのヴィルバーギュ。香りはパワフルでフルーティ、しだいにドライフルーツ、タバコがあらわれ、ペッパー、タバコ、スイーツのような甘さもあるデリケートな風味へと変化してゆきます。味わいはストレートかつ芳醇、フルーティで甘いスパイスが感じられ、ふくよかで丸みのある心地よい余韻が長く続きます。

世界中のラムイベントにも積極的に出品しているため、もともとヨーロッパでの人気が高いのはもちろん、近年は手ごろな価格もあいまって、日本での知名度も抜群に上がってきている「ニュー グローブ」。そこに世界レベルのラムコンペで、一流テイスターたちの厳しい審査を経てたった一つの最優秀賞を獲得したともなれば、日本のラムファンが黙っているわけはありません!

モーリシャスが誇る5つ星ラムブランドの実力を心ゆくまで堪能できる「ニュー グローブ 2004 ヴィルバーギュ」!惜しくも数量限定入荷とはなりますが、定番人気商品の「ニュー グローブ 5年」をご愛顧いただいている皆さまをはじめ、ひとりでも多くの方々に、この一段上を行く香り高さと甘みをご体験いただければ幸いです!

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LOUIS DE LAURISTON CALVADOS DOMFRONTAIS 1981

密造酒から、最高級のブランデーへ ー 舞台裏には「獅子の心を持つ男」が!

イギリス海峡を挟み、英国を臨むフランス北西部の地方、ノルマンディー。その名は「北の人間の土地」という意味を持ち、第二次大戦時の「ノルマンディー上陸作戦」でも有名な地です。

温暖な気候で牧草の生育に適しており、フランス国内の牛肉および酪農製品のおよそ25%はこのノルマンディーで生産されているのだとか。また、海に面しているため魚介類にも恵まれており、名物のホタテにいたっては、近年その漁業権をめぐってイギリスと火花を散らしたなどということも。

そしてもちろんこの地で忘れてはならないのが、名産のリンゴと洋ナシで造られる極上のカルバドス。しかしカルバドスと名乗ることができるのは、AOC法で定められた厳しい条件をクリアしたものだけで、生産地域や蒸留法などその条件にそぐわなかったものは単なる「アップル・ブランデー」と呼ばれるのみなのです。

さて、今回ご紹介するカルバドスの名門「ローリストン」は、原料として特に洋ナシの含有率が多い「ドンフロンテ」を看板商品として掲げる造り手です。非常に柔らかく、繊細で優しい甘さ、優雅で深みのある味わいが特徴のドンフロンテ。しかしかつてドンフロンテの生産者は、徴税を逃れるために隠れて違法な蒸留を行うこともしばしばあったのだとか。そんな中1962年のとある夕べ、鼻息荒く押し掛けた税務署員によって密造者の農民がその場で現行犯逮捕されてしまい、ここで歴史が大きく動きます。なんと窮地に立たされた同胞を救い出すべく、一時間もしないうちに数十人もの近隣農民が現場に乗り込み、税務署員たちを取り囲んだのです!その数に恐れをなした署員たちは、農業組合の事務局長であったルイ・ドゥ・ローリストン公爵にこの状況をなんとかしてほしいと助けを求めました。一触即発の場に駆け付けた公爵はにらみ合う両者の間に立ち、話し合いを開始。そして根気強い交渉の末、法に則って生産されたカルバドスを貯蔵・販売するための正式な拠点を設けることを条件に、蒸留を行った者への罰金を免除することが合意されたのです。 こうしてローリストン公爵によって創設されたセラーが「レ・ケ・デュ・ヴェルジェ・ノルマン」であり、それ以来ドンフロンテの農民たちが生産したカルバドスは、ここで熟成・瓶詰めされ、ローリストン・ブランドとして世に出るようになりました。

その後、1992年に「クリスチャン・ドルーアン社」がパートナーとして迎えられ、ローリストン・ブランドの製品流通は同社に委ねられることになったのですが、ここでローリストンは大きなアドバンテージを手にします。というのも「ローリストンは、カルバドス界の名士として名高いクリスチャン・ドルーアン氏の貴重なプライベートストック・キュヴェを瓶詰めしている」という大いなる栄誉に与ることになったからです!

「カルバドス・ドンフロンテ協会の会長」「カルバドスの大ブランド・クールドリヨンのオーナー」と、まさに「カルバドス界の首領(ドン)」の名に相応しい肩書きを持つクリスチャン氏。そして同氏のヴィンテージもののプライベートストックは、そのまま「出したらそれで終わり」という超限定原酒!気長に待てば、また出てくるというものではないのです。その稀少極まる古酒をリリースしているとあれば…世界中のカルバドスファンは黙っていないでしょう。

今回ご紹介する「ローリストン カルバドス ドンフロンテ」1973&1981年も、やはりクリスチャン・ドルーアン氏の貴重なプライベートストックが注ぎ込まれたプレミアム品。近年人気が高まってきているカルバドスの中でも、その魅力が十二分に味わえるスペシャルボトルです! ちなみにクリスチャン氏が率いるブランドの「クールドリヨン」とは「獅子の心」という意味の語。イギリス歴代王の中でも人気の高いリチャード一世は「獅子心王」と呼ばれ崇められましたが、先のローリストン公爵もまた、農民と税務署のあいだに勇ましく割って入り、事態を解決へ導いたという点で「獅子の心を持つ人物」と言えるでしょう。

彼なくしては、いまだ吹雪の夜、小屋の暗がりでこっそり蒸留される密造酒だったかもしれない「カルバドス・ドンフロンテ」。ローリストン公爵の心意気が、このすばらしい熟成カルバドスの見えない礎になっているのです。

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DOMAINE DE LAUBUCHON 1967 ・ DOMAINE DE LASSALE 1973

そのブランデー、マウント用に非ず。古酒アルマニャックだけが導ける、深遠な世界はここにあり。

「そのお金持ちの酒棚には、高級なブランデーがずらりと並んでいた」――このシーンを思い浮かべるとき、あなたの頭の中にはどんな酒瓶が現れるでしょうか。「高級 ブランデー」などのワードでインターネットを検索すれば、おそらくそのイメージに当てはまるボトルが次々と出てくるでしょう。飲んだことはなくとも「高級そうなあのお酒」で我々庶民の記憶にもうっすらと残っている、特徴的なあのボトルやこのボトル…。オウムガイやひょうたんのような形のもの、帆船を模ったもの、美しいカットを施した宝飾品を思わせるもの。果てにはかのバカラ製のボトルまであるのですから、いかにこれら高級ブランデーが「富と成功の象徴」として世に送り出されてきたか、その外観だけでも痛感できるというものです。

さて、対して今回ご紹介するアルマニャック2種は、その対極をゆく奥ゆかしきルックスの作品。良くも悪くも「プレミアムな圧」を感じさせない、穏やかで慎ましやかなボトルなのです。

この飾り気のなさは、アルマニャック全般に言えることかもしれません。フランスが誇るもう一つのブランデーであるコニャックは、有名な大手ネゴシアンが多く生産に携わっており、古くから一大ビジネスとして高級ブランデーを世界各国に送り出してきました。

対するガスコーニュ地方のアルマニャックは、コニャックよりも古い歴史を持ちながらその生産量は20分の1にも及ばず、小規模な生産者が自家消費的に酒造りを行ってきた地です。そしてそのガスコーニュにあり、1246年まで歴史を遡ることができるのが、今回ご紹介する「ジェラス社」なのです。

1865年の会社設立以来「人柄がやさしく、料理も美味しい」大らかな雰囲気のガスコーニュ・スピリッツを持ち続けてゆくことに誇りを持ち、現在に至るまで同族経営を守り続けているジェラス社は、アルマニャックの生産者であり、またネゴシアンとして貴重なビンテージ品を保有する古酒のスペシャリストでもあります。

JISでも大変好評を博している「ジェラス 10年」はクラスを越える品質のスーパースタンダードとして知られていますが、今回ご紹介する「ドメーヌ ド ロブション 1967」「ドメーヌ ド ラサール 1973」は、いずれも大変貴重なシングルドメーヌ(単一生産者)もののビンテージ品。

「ドメーヌ ド ロブション 1967」は、ネゴシアンとしてのジェラス社がアルマニャックの伝統と精神によって大切に保存していた50年近い熟成物。生産元はセナック氏で2015年ボトリングとなっており、非常に目の詰まった液体が5年越しの瓶熟によって角が取れ、ゆっくりとほぐれ始めています。そう、「まさに今」手に入れたい至高の食後酒になっているのです。

「ドメーヌ ド ラサール 1973」の生産元はアンドレ・コスト氏。フィロキセラによって衰退し、栽培の難しさから消滅しつつある非常に貴重なフォルブランシュ種と、同じく時代の波に揉まれ消え行く運命にあるバコ種を使い、古の味わいを実現せしめた「幻」と言ってもいいアルマニャックです!ランシオ香にプルーンの風味、タバコやムスクと言った複雑な味わいは、この品種と熟成があるからこそ。現代では作ることのできない遺産とも言える、古酒の妙味はここにしかありません。

コニャックや他のお酒に比べ、その価値が正当に評価されることなく、長く衰退していたアルマニャックですが、その品質とパフォーマンスによって近年また注目を浴び始め、見直されています。 しかしながら他のお酒と同様、アルマニャックの古酒は枯渇し、価格が高騰しているのも事実です。そう、ゆったりした時間が流れていた時代には当たり前だったものが、またひとつ現代から失われようとしているのです。

ストックが尽きようとしている今、コニャックでは決して味わえない稀有で優美な味わいを一人でも多くの人に味わっていただきたい、この価格でこれだけのお酒を入手できる喜びをぜひ享受していただきたい…と、JISの担当者も悲痛の思いで懇願の声を上げる「本物の、極上の蒸留酒」。

酒棚の上で他のキラキラブランデーと肩を並べれば、その画の中では確実に埋もれてしまうであろうこれら二本のアルマニャック。もちろん富と成功のアピールにはまったく役に立たないでしょうし、世俗的な酒棚マウンティングにも無縁の品でしょう。

しかしその実体は、現代のコニャックやアルマニャックでは決して味わうことのできない、得も言われぬノスタルジーを内包した珠玉の作品。

数十年という長い熟成時間を過ごした時にのみ突如として放たれる、繊細かつ優美で、飲み手の心を震わせるアロマ…それは誰かに得意顔で語るものではなく、たった一人で思う存分陶酔していただきたい、深遠な世界への入り口なのです。

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VALDESPINO FAMILY HERITAGE BRANDY

美しい秩序と、理不尽な人生と ー 「家族の遺産」と名付けられた、シェリーブランデーが持つ重み。

かのワイン評論家ロバート・パーカー氏をして「ヘレスのロマネ・コンティである」と言わしめる、シェリーの名門「バルデスピノ社」。13世紀からワイン造りを始めたとされる老舗ですが、その品質の高さはお墨付きで、1883年には「スペイン王室御用達」のシェリー生産者という名誉に与っています。

そんな500年以上の歴史を誇るバルデスピノ家でしたが、1999年、当時オーナーだったミゲル・バルデスピノ氏は、伝統ある自社をホセ・エステベス社に売却してしまいます。家族で代々受け継いできた名門ボデガを、なぜミゲル氏は手放してしまったのでしょうか。

その陰には、実に悲痛な事情がありました。ミゲル氏には自慢の息子さんと、地元パレードの女王に選ばれたほどの美しい娘さんがいたのですが、愛息は健康を害し病の床へ、そしてあろうことか愛娘は交通事故でこの世を去ってしまったのです。氏の嘆きはいかほどのものだったか…名門としての誇りも、仕事への情熱も、大切な二人の子どもが飲み込まれた数奇な運命によってかき消されてしまったのかもしれません。

そしてミゲル氏は会社と共に膨大な古酒のコレクションもすべて売り払ってしまったのですが、その中の氏のプライベートストックにあったのが、この「バルデスピノ ファミリー ヘリテージ ブランデー」でした。

19世紀から脈々と受け継がれてきた「ソレラシステム」で造られたこちらは、平均熟成年数60年を越え、さらには100年以上前の古酒も含まれているといわれています。

シェリーに馴染みのある方なら、その製法の要となる「ソレラシステム」についてはすでにご存知かと思いますが、これは「同銘柄のシェリーの品質と味わいを維持するために行われる、継ぎ足し熟成法」になります。ボデガ内に数段に積まれた「クリアデラ」と「ソレラ」の樽で構成されたソレラシステムでは、一番下に置かれた「もっとも熟成年数が長い樽(ソレラ)」から抜き取ったシェリーを瓶詰めします。もちろんそうすると、ソレラの中のお酒は抜き取った分減りますので、今度はその減った分を上段の「第一クリアデラ」に入っている熟成途上の若い酒を抜き取って補充します。さらに第一クリアデラから抜き取られた分は、その上段の樽「第二クリアデラ」の中にあるより若い酒で補うのです。

そう、このソレラシステムは「もっとも年を重ねたものから樽を去り、その空きを若い世代が補う」という、秩序正しい仕組みといえるわけです。古いものに新しいものが加えられることで、毎年安定した品質と個性を保ち、伝統的な味わいのシェリーが生まれるという実に理にかなったシステム、それが「ソレラシステム」なのです。

しかし人の世は、いつもこんな風に美しい秩序を保っているものではありません。「老いた者が去り、若者がその後を継ぐ」一般的なパターンから外れてしまったミゲル氏のような人生も、少なからずあるのです。

理不尽だと罵りたくなるような状況の中で、氏はどんな思いで一家に受け継がれた「秩序ある美しいシステム」を手放したのでしょうか。

1897年から続くソレラシステムによって60年以上の熟成を極め、極上の長熟シェリーと濃厚なブランデーのカクテルのような逸品に仕上がった「バルデスピノ ファミリー ヘリテージ ブランデー」。

「家族の遺産」と名付けられたこのシェリーブランデー、ミゲル氏に敬意を表しながら、襟を正して味わいたいものです。

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CHATEAU DU BREUIL 17YO CASK #1899 BREUIL COLLECTION 2019

珍奇ラベルは二度見必至!誰もがのけぞる圧倒的なインパクト…その中身や如何に?

「このラベルは一体…」

多くの方がそうつぶやかずにはいられないであろう、「なんとも言い難い」ラベルが主張するこのボトル。個性的、アーティスティック、ユーモラス…そんな穏和なコメントでは表現しきれない、心をざわつかせるインパクトがそこにはあります。

ご開帳!とばかりにぱっくり開かれた顔面から、不敵な笑みを浮かべたもう一つの顔をのぞかせる一頭身キャラクター…そんな説明だけでもエキセントリックさを存分に感じ取れるデザインですが、そのボトルの中に詰められているのは、なんと名門シャトードブルイユ社の「17年越え熟成カルバドス」!

そして実はこの珍妙なラベル、シャトードブルイユ独特の瓶形が誕生した1960年代のフランスに着想を得て、当時の思想である「自由、平等、性の解放」を表現したという同社としては革新的なデザインのものなのです。個性的なフォルムのボトルで世を驚かせたブルイユですが、この試みも相当思い切ったものだったのではないでしょうか。

そう、このラベルを見ても分かるように、顔というモチーフは人を和ませるものであると同時に、胸騒ぎを起こさせる要素も大いに持っていると言えるでしょう。たとえば子どものころ、妙に怖かったものを思い出してみてください。そこには「見たくないのに脳裏に焼き付く」、奇妙なキャラクターが存在していなかったでしょうか。例を挙げれば「砂糖カット甘味料のパッケージ」「満面の笑みを浮かべるタイヤ」「某クイズ番組のジョーカー坊や」「ポンキッキの『かぜひいてねんね』のアニメーション」…等々(著しく世代の限られること恐縮です)。そしてこの恐怖の面々、まさにすべてが「顔面モチーフ」のキャラクター群なのです。

他方、これらの顔面一族は同時に「うす目を開けてちょっと見てみたい」という好奇心を掻き立てるものでもあるように思います。そう、怖いもの見たさというやつです。考えてみれば鬼ごっこ、かくれんぼ、だるまさんがころんだ、といった昔から続く子どもの遊びにも、何らかの形で「恐怖」は欠かせないスパイスとして存在しています。命を脅かす外敵から逃れ、安全圏を確保した後、人は恐怖を希釈した「スリル」を魅力的な刺激として楽しむようになったのかもしれません。

そう言えばお酒にも急性アルコール中毒などの危険性が潜んでいますが、我々はそれを魅力的な刺激として日々の楽しみにしているのもまた事実。「リスクあるものを敢えて嗜む」という行為、それは生物の進化の証なのでは…と勝手な想像も膨らんでしまいます。

さてその伝でいけば、馴染みのバーで無防備に寛ぎながら、ほど良く正気を目減りさせた状態でこの「シャトードブルイユ コレクション」の珍奇ラベルを眺めるというのも、一種高等な愉しみなのかもしれません。そもそもひょっとして、このラベルは素面ではなく、ほろ酔い気分で見てもらうことを前提にしたものだとしたら…?普段はカルバドスを嗜まない方でも、気持ちよく酔いが回ってきた頃合いで「じゃあ、次はあの変な顔のボトルをもらってみようかな」となる流れ、想像に難くありません。それを見越したものならば…このデザイン、なかなかの曲者だと言えないでしょうか。

しかしどんな風変わりな外見でも、中身は46%という高めの度数で仕上げられたシングルカスクの高品質ペイドージュカルバドス。王道の食後酒としてはもちろん、ロック、ソーダ割、カクテルと幅広く楽しめる優等生ですので、興味半分で口にした方も、ラベルに続いて二度びっくりされるはずです。

そしてきっとその夜は、絵面さながらのシュールな夢が見られるに違いありません。

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ROYAL SEDANG GIN

これはお酒か、香水か?ジン嫌いの方にこそお勧めしたい、アジアンクールビューティー・ジン!

1888年からわずか二年の間存在した、ベトナム南中部の「セダン王国」。この国名は、同国の構成民の一つに少数山岳民族「セダン族」がいたことに由来するそう。ちなみに綴りは「SEDANG」となり、自動車の「セダン(SEDAN)」とは異なりますのでご注意を。

そしてこのセダン族や他部族の首長らによって選ばれたセダン国王が、地中海沿岸リヴィエラの都市・トゥーロン生まれのフランス人、シャルル・マリー・ド・マイレナ氏でした。冒険家という肩書を持つマイレナ氏は、生涯を通してパリ、ベルギー、ジャワ、香港などさまざまな都市を飛び回っていましたが、そのパワーの源となっていた一つが、氏が愛してやまないお酒「ジン」だったのです。 折しも時は19世紀、1826年に発明された連続式蒸留器によってジンが飛躍的な品質向上を遂げた時代です。1842年生まれのマイレナ氏が楽しんだのも、この画期的発明によってぐっと洗練度を増した「新世代のジン」だったのでしょう。

そしてこちらの「ロイヤルセダンジン」は、そんなジン・ラヴァーかつ「フランス人最後の王」マイレナ氏にあやかり、「フランスとベトナムの文化の出会い」をテーマに造り上げられた魅力あふれるモダン・ジンなのです。

ボタニカルとして用いられているのは、ベトナム産にこだわったコリアンダー、ジンジャー、ジャスミンの茶葉、そしてレモングラス、ライチ、ライムの6種に加え、ハンガリー産のオーガニックジュニパーベリー。これら選りすぐりの素材を時間をかけてマセラシオンし、フランス・コニャック地方で1870年から続く蒸留所にて、コニャック用の古い銅製ポットスチルを使って蒸留します。さらに蒸留後は6~8週間休ませ、同じコニャックのジャンサック・ラ・パリュ村(レミーマルタンのセラーがあることで有名です)に湧き出る泉の純水を使い、加水を行います。

そうして出来上がった作品から立ち上がるのは「これがジン!?」と息を呑んでしまうような、気品に満ちた香り高いアロマ!それはまるで腕利きの調香師がじっくりと時間をかけて造り上げた、気高い香水のよう。みずみずしく精彩を放ち、溌剌としていながらも粗っぽさはなく、エレガントでシャープにまとまった全体からほのかに顔をのぞかせる、媚びのない甘さ…。そう、まさにこれは「ジンに苦手意識を持っている方」にこそ体験していただきたい、驚きのフレグランスなのです!

街中で、得も言われぬ良い香りをまとった人とすれ違い、思わず振り返ってしまったという経験…きっと皆さまもお持ちでしょう。ロイヤルセダンジンには、この「人をはっとさせる」名状しがたい香気が秘められています。それは決して華々しいものではなく、強く主張するものでもありません。しかし我々の心をそっとゆさぶる引力が、間違いなくそこには存在しているのです。

敢えて言うなら「クールビューティー」。グラスに顔を近づければ、清廉なアオザイに身を包んだ凛々しいベトナミーズのイメージが目に浮かぶはず。また、セダンの国旗を模したキャップシールと、ラベルに描かれた雄々しいインドシナタイガーの鮮烈な赤い色も、実にオリエンタルでスタイリッシュな印象です!

そしてそのなめらかな口当たりと優しい味わいは、カクテルへの創作意欲を大いに掻き立ててくれるもの。ライムジュースの代わりにレモングラスの葉を使った「ロイヤルセダンジン・トニック」、ハニーウォーター、ジャスミンオイル、ライムコーディアル、日本酒、プラムビターと合わせた「ホーリー・ウォーター」など、異国情緒たっぷりのオリジナルカクテル構想が次々と湧き出てくることでしょう。

なお世界各国からの評価も上々で、「チャイナワイン&スピリッツアワード2019」ではみごと金賞、「インターナショナルワイン&スピリッツコンペティション2019」では銅賞を獲得しています!

ボトルからアトマイザーに詰め替え、香水のように身にまといたくなってしまう「アジアのエッセンス」的傑作!「ジンはちょっと…」という皆さま方、どうか騙されたと思って、この清らかな香りに包まれてみてください!

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PAUL GIRAUD CUVEE SPECIALE EDITION 2019 CHAI DE LA SOURCE

シャラントの滴るほどの露に包まれ、そのコニャックは「別格」になる。

フランスブルボン朝初代の王、アンリ4世。「良王アンリ(le bon roi Henri)」と呼ばれ、1572年の在位より現代に至るまでフランス国民の間で高い人気を誇る王の一人であり、かつての50フラン紙幣で肖像が採用されていたことも。

その良王をして「王国で最も美しい川である」と称えられたのが、全長約360km、仏西部を流れ大西洋に注ぎこむシャラント川です。古くから盛んな水上交易が行われ、地域貿易を支える大動脈の役割を担ってきた名河川ですが、その流域に広がる有名なブランデー産地が「コニャック」であり、さらにその中の小区画「グランシャンパーニュ」こそ、世界最高峰のブランデーを生み出すエリアとして崇められる「特別(スペシャル)な」地なのです。

さて、そのグランシャンパーニュで300年以上前から素晴らしいコニャックを生み出している名生産者が「ポールジロー」。他のコニャック大手メーカーも多数居を構える同地において、ブドウ栽培、発酵、蒸留、熟成、瓶詰めまであらゆる工程を自社で行う「プロプリエテール」の代表的存在として、広く世に知られています。

ポールジローがグランシャンパーニュのブートビル村に所有する畑の面積は42ha、当主ジロー氏はその畑に日参し、ブドウの成長を確認、状態を観察し、何か異変のサインはないか、健やかに育っているかを自らの目で確かめます。

また大手メーカーの生産ラインが機械化されているのに対し、ポールジローではすべてのブドウを一つ一つ手で摘み、品質を確認しています。醸造もイースト菌を用いた短縮型のものではなく、逐一ブドウの様子を見ながら丹念に自然な発酵を行っているとのこと。さらに蒸留時には簡易ベッドを蒸留所へ運び入れ、泊まり込みで作業に取り組むこともあるというこだわりよう。AOCの規定により原酒の最終度数は70~72%のあいだに収める必要があることから、この規定をオーバーしないよう30分ごとに状態を確認するためなのですが、この時期はまさに「寝る暇もない」期間というわけです。

そして蒸留後の原酒を熟成させるのが、ジロー氏自慢の築300年以上という歴史あるセラー。 今回ご紹介する「ポールジロー キュベ スペシャル」は、ジロー氏にとって非常に思い入れのある1960~1970年代のシングルビンテージを特別にボトリングした日本市場限定シリーズなのですが、こちらの「シェ・ド・ラ・スルス」は今までにない「熟成環境にフォーカスして造られたアイテム」で、ジロー氏がモンタンドルに所有する4つのセラーのうちのひとつ「シェ・ド・ラ・スルス」で熟成された、大変貴重な1974年シングルビンテージコニャックになるのです。

「シェ・ド・ラ・スルス (Chai de la Source)」とは「水源にあるセラー」の意。シャラント川由来の水源から新鮮な水が一年中流れこんでいるというこのセラーは類まれな高湿度になっており、驚くほどの水分を含んだ空気が、ジロー氏の繊細なコニャックに得も言われぬ丸みをもたらしてくれるとのこと。

「湿度が大切ならば、すべてのセラーに最新鋭の大型加湿機器を導入するという方法もあるのでは?」と考える方もいらっしゃるでしょう。しかしジロー氏は機械に頼らず、自然な状態でコニャックを寝かせることに重きをおいているのです。

「良いコニャックを作るのは人じゃない、テロワールと時間だ」と語る氏のセラーは、熟成中に蒸発するアルコールによって壁や天井が黒ずみ、室内には静かに眠るコニャックのふくよかな香りがあふれています。そう、そこは美しいシャラントの流れが目に見えぬ露となり、空間を満たしている神秘の場なのです。その隠れ家に寝かされた若いコニャックに、シャラント川のエッセンスがゆっくりと時間をかけて滲みこんでゆく様――きっと皆さまにもご想像いただけるでしょう。

繊細にして優雅、ふくよかで気品のある香りと味わいによって、一般的なブランデーのイメージをやすやすと覆してしまうというポールジローのコニャック。

約束の地・グランシャンパーニュで指折りの名生産者が選び抜き、稀有なセラーでじっくりと熟成させた一本――
はたしてこれ以上の「スペシャル」を望むことはできるのでしょうか?

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NICARAGUA 17YO / KINGSBURY RUM

「幻だった…」と嘆かぬように!消えゆく逸品・長熟ラムは、見かけた時が射止める時!

シングルカスクラム、その発祥は英国にあります。

最初の本格的なシングルカスクのラムを手掛けた人物とも言われる、スプリングバンク蒸留所の営業責任者だったビル・トムソン氏。1988年に同社を退社したトムソン氏はハイランドのカランダーに移り住み、ラムの瓶詰めを始めました。初期のイタリア・ベリエ社やブルームスバリー社のラムも彼の手によるものであり、ベリエ社が瓶詰めを行っていたトリニダード・トバコのカロニー蒸留所の原点もまた、トムソン氏にあるとも言えるでしょう。

1994年、JISはシングルカスクのスピリッツにこだわりを持つキングスバリー社のロビン・バイヤー氏に、ラムのリリースを依頼しました。バイヤー氏は旧知の間柄であったブリストル・スピリッツ社のジョン・バレット氏と共同でシングルカスクラムをリリースすることを決め、ウイスキーとは一線を画すべく議論を重ねた結果、バイヤー氏のアイデアでシェリーの黒瓶とブリストルのブランド名を採用、1996年に最初の作品となるラムを世に送り出したのです。

その後ブリストル・スピリッツ社はラムをビジネスの中心に据えてゆくことになるのですが、こうした経緯を辿ってみると、ブリストル・スピリッツ・ラムの生みの親はキングスバリー社なのだと言えるのかもしれません。

そして今回ご紹介するのは、キングスバリーが「蒸留所の個性」「樽単位の個性」にこだわり、全てシングルカスクで瓶詰めした大変貴重なバックビンテージものである「キングスバリー シングルカスク ラム」。もちろんノンチルフィルター、ノンカラーでボトリングしています。

「キングスバリー シングルカスク ラム」は大手ブランドにはない世界各地のラムの個性を存分に味わえる、実に魅力的なシリーズ。わずかな量のみ生産されたワンバッチ限りのビンテージ品で、植民地時代におけるかつての支配国の色合いを強く残しながら発展してきた秀作です。

こちらの「ニカラグア 2000 17年」は、優しい口当たりで抜群のバランス感に驚かされる一本。繊細なバニラが柔らかく香り、豊潤なスペイサイドモルトを彷彿させる玄人好みの作品に仕上がっています。

シングルモルトウイスキーのボトラーとして有名なキングスバリーですが、もはやボトラーズ・ブランドは一部の愛好家のための特別な商品ではなく、一般のお客様にも広く愛飲される商品となりました。より美味しいスコッチウイスキーを求めるお客様が、複数の蒸留所の原酒をブレンドしたブレンデッドウイスキーから単一蒸留所のシングルモルトへ、そして世界中で流通しているオフィシャルのシングルモルトからボトラーズ・ブランドのシングルカスクへ、ステップアップしてゆくことは自然な流れではないでしょうか。そしてこのことは、ウイスキーだけではなくラムにも当てはまるとJISでは考えています。

とは言え長期熟成の蒸留酒は、シングルモルト以外でもますます入手が難しくなってきているこのご時世。世界的需要に加え、長きにわたり在庫を寝かせておかねばならないため、その手間や稀少性も加味され、右肩あがりで年々価格が上昇しているのです。

残念ながらおそらくこの流れはますます加速してゆくはずで、かつてのように長熟した蒸留酒を気軽に楽しむことができなくなる時代が、すぐそこまでやってきているような危機感を抱きます。

特にラムの世界は長期熟成品自体の生産が少なく、世界中で優れた商品を奪いあっていると言っても過言ではない状況…もし皆さまがこれからも長熟ラムを手頃な価格で楽しみたいとお望みなら、入手可能な今のうちに出来る限りストックしておくことをお薦めせずにはおれません。

そう、一昔前には簡単に入手できたラムが今はもう見かけることさえない…というこの現状、冷静に鑑みていただければ、決して大げさな話ではないことをご理解いただけるはずです。

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GENEROUS GIN AZUR

エデン生まれの碧きジン ー 瓶の口からあふれだすのは、地中海の風と空!

「自分の思いどおりに酒を造ってみたい」

ワイン、日本酒、ウイスキーなど数多あるお酒の生産者たちが、一度は思い描く夢ではないでしょうか。

けれども実際には生産者の方針やスタイルに合致しなかった、または造ってみようとしたが技術的にうまくできなかったなど、造り手の誰もが望みを叶えられるわけではありません。

そんな中、一人のディスティラーが夢見たお酒があります。

「エデンの園にある生命の樹を象徴するような蒸留酒を造りたい」

ジンの理想郷を思い描きながら試行錯誤を重ねた末に、彼はついにこの壮大な願いを叶えました。
その一本こそが「ジェネラス ジン」です。

天然由来の原料を使い、高精度の生産技術を駆使して仕上がったこのジンは、自然がつくり出す様々なフレーバーを複雑に組み合わせた最高の蒸留酒。素晴らしいワインや香水を彷彿とさせ、シトラスとフローラルフレーバーが完璧に調和したスペシャルな芳香は、多くのジンラヴァーを虜にしました。

それぞれのフレーバーが主張しながらもハーモニーを奏でるすっきりとした味わいは、ストレートやロックはもちろん、最高のジントニックとして楽しめるポテンシャルを秘めたもの。また、香水瓶を思わせるお洒落なボトルは、バーカウンターでも目を惹くことでしょう。

さて、今回ご紹介するのはこちらの「ジェネラス ジン」シリーズの新商品となる「ジェネラス ジン アジュール」です!

「ジェネラス ジン アジュール」は、南フランスの風光明媚な保養地として知られる「コート・ダ・ジュール」に広がる紺碧の空や、そこで感じられる香気を瓶の中に閉じ込めた、涼やかな洗練さと力強い華やかさを併せ持つ作品。

そう、コート・ダ・ジュールといえば、碧くきらめく海が印象的なニースの海岸遊歩道「プロムナード・デ・ザングレ」を思い浮かべる方も多いでしょう。しかしこの地の内陸部には、香水の産地として有名な街「グラース」があるのです。

もともとは革なめしが主要産業だったグラースですが、18世紀末に香水を染み込ませた革手袋が開発され、それが流行したことをきっかけに香水産業が隆盛したと言われています。今や「香りの聖地」として世界各国から調香師が参じ、ユニークな「国際香水博物館」も人気を集める街となったグラース。「ジェネラス ジン アジュール」には、そんなグラースに漂う芳しいフレグランスの数々がしっかりと籠められているのです。

力強く、地中海のフレッシュなシトラスや新鮮なスミレの香気に、繊細なバジルを伴った美しい複雑さが特長で、ほのかにブラッドオレンジの風味も。フィニッシュにはビターオレンジが現れ、カクテルにすれば熟した柑橘類のパワフルでストレートかつバランスの良い味わいに、複雑な花のブーケが楽しめます。

複雑なパイプオルガンの鍵盤を操るように、様々な自然のフレーバーを巧みに組み合わせて誕生した「ジェネラス ジン」。緑色の「オーガニック」、紫色の「パープル」に続いて4作目となる碧き「アジュール」ですが、この最新作からも理想郷〈エデン〉のコンセプトを余すところなく感じられるはずです!

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DEPAZ PLANTATION

天の高み、奈落の深み ー 美酒の底に秘められた、紅蓮のごとき鉄の意志。

マルティニーク島のペレ山の麓に広がる、島内で最も美しいサトウキビ畑。そこはラムの蒸留所「デパズ」の地所です。

マルティニーク島の人々に「島内で一番美しい蒸留所はどこ?」と聞いた時、真っ先に名前が挙がるのがこのデパズ。島の北西部「サン・ピエール」という街から内陸部へ上った高台に位置しており、入り口から左手には一面のサトウキビ畑、蒸留所内からは雄大なカリブ海が一望できるという最高のロケーションにあります。

高級な会員制リゾートクラブを思わせるエントランスからはきちんと舗装された道路が続き、両脇の芝生もきめ細かに整えられたもの。さらに進むと、円形の大きなガゼボ(あずまや)のようなレストランが目の前に。中に入るとテーブルにはラムブランが何本かに、シロップ、そしてカットされたライムが山盛りに積まれており、この「セルフサービス・ティポンシュ・コーナー」を囲んで、お客はめいめい昼間から自由にラムを楽しんでいるという風情。そう、まさにそこは「楽園」と呼びたくなるような、美しく満ち足りた空間なのです。

しかしこの天国のような佇まいのデパズが、この世の地獄ともいえる壊滅的状況から再建された蒸留所であることも忘れてはならない事実です。

「カリブのリトル・パリ」とも呼ばれ、製糖業の盛んな街として栄えてきたサン・ピエール。そしてその街の背後にそびえたつのがマルティニーク最高峰のペレ山であり、その雄大な姿は街の守り神にも見えるでしょう。

しかし1902年5月、このペレ山は大噴火を起こし、悪魔のような熱雲がサン・ピエールに流れ込み街は焼き尽くされてしまったのです。三万人とも言われる市民が数分のうちに命を奪われ、生存者はなんとたったの三名とも。デパズ一家も皆この災害で命を落とし、当時ボルドーに留学していた息子、ビクター・デパズ氏だけが一家の生き残りとなりました。

家族はもちろん、生まれ故郷の人々が死に絶えてしまったビクター氏の心境 ―― 想像を絶する、という言葉しか浮かびません。

そうして破産し天涯孤独の身となったビクター氏はカナダに移住を決めますが、そのカナダまでの旅程でサン・ピエールに立ち寄ると、一転この地に残ることを決意、焦土と化したサン・ピエールに自らの運命を委ねることにしたのです。

たった一人で焼け野原となった故郷の再興に向け立ち上ったビクター氏の決意は、いったいどこから湧き上がってきたのでしょうか?――逆境と呼ぶには凄絶過ぎる氏の当時の思いには、平伏するほかありません。

そして15年後、ビクター氏は悲願となるデパズ蒸留所の再建に漕ぎつけます。また皮肉なことに、街を壊滅させた火山灰はサン・ピエールの土壌を肥沃にし、収穫されるサトウキビの質もぐっと上がりました。そうして復興を遂げたデパズのラムは、ホワイトラムだけではなくゴールドラムや熟成したラムなど、その全てが非常に良質だと評判を呼ぶようになったのです。それは「アグリコール・ラムのグラン・クリュ」とも「爆発するようなラム」とも表現され、数々の品評会で賞を獲得してゆくことになります。

今回ご紹介する「デパズ・プランテーション」はオーク樽で3~4年熟成させたラムをブレンドしており、繊細なバニラのアロマが微かなココナッツやチョコレートと混ざり合い、熟成過程で生まれたプルーン、ココア、シナモンなどのやわらかな香りが次第に広がってゆく、一段上のプレミアム・スタンダード作品!まろやかな口当たりが特長で、そのままではもちろん、カクテルのベースとしても汎用性の高い傑作ながら、お値段は控えめなのが嬉しいところです。

知名度はそれほど高くはないものの「デパズしか飲まない!」という愛飲家の皆さまが日本にも多くいらっしゃり、アグリコール・ラムにご興味をお持ちの方であれば、ぜひ一度は試していただきたいブランドが「デパズ」なのです。

現在デパズではSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みとして、豊かで自然のままの環境を守り、それを取り巻くすべての生物多様性を保護することが重要だと考えており、農業分野ではHVE(環境価値重視認証)、工業分野ではISO14001認証を取得しています。

そんな蒸留所の敷地内から見上げるペレ山はとても美しく、素敵なレストランでは観光客が昼から陽気にティポンシュを楽しむ――デパズが「世界で一番美しい蒸留所」と褒めたたえられるのも、もっともかもしれません。

しかし、琥珀色に輝くデパズのラムの向こう側には、かつて地獄のような光景が広がっていたサン・ピエールの惨状があり、また同時にその地を見捨てられず、たった一人で復興に命を燃やした不屈の男がいたことを、どうぞ思い出していただければと思います。

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CALVADOS VIEILLE RESERVE BIO ORGANIC

猛暑に鰻も良いけれど…優しく体に沁みこんでゆく、オーガニックのお酒はいかが?

「オーガニック」とは、農薬や化学肥料などの化学物質に依存せず、自然の力を利用して行う農林水産業や加工方法のこと。今回はまだ世界的にも珍しい、国際機関の認定を受けたオーガニックカルバドス「ドメーヌ レクロニエ」をご紹介いたします。

このカルバドスは果樹園から瓶詰めにいたるまで、全ての工程において自然を尊重した方法で造られており、「エコサート」というフランスの国際有機認定機関から認定を受けています。

エコサートとは農学者団体によって1991年にフランスで設立された、その製品がオーガニックを名乗る条件を満たしているかを厳しく審査し、認定を行なう第三者機関です。いまやオーガニック認定の世界基準とも言われ、高い評判と信頼を得ている世界最大規模の国際機関であり、現在は日本を含む世界各地26の事務局を拠点にし、158ヶ国で農産物、加工食品、畜産物、化粧品、綿、その他さまざまな有機認証を提供しているということです。

そんなエコサートからお墨付きを得ているカルバドス「ドメーヌ レクロニエ」ですが、この作品を手掛けるジェローム&ルドヴィック レクロニエ両氏のこだわりにも、目を見張るものがあります。

なんと両氏は、1726年よりレクロニエ家が3代に渡って世襲してきた美しい農場「丘の上の荘園(マノール・ド・ラ・モット)」を薬品等の散布を一切行わない形で改良することを決断、そして3年もの期間をかけて見事オーガニックに切り替えたのです!

東京ディズニーランド約1.1個分に相当する55haの面積を誇る農場を生まれ変わらせるという作業…本当に気が遠くなるというものです。

さて、そうした自然の恩恵の中で育ったリンゴ(65%)と洋ナシ(35%)で仕立てられるカルバドス「ドメーヌ レクロニエ」。こちらはリンゴと洋ナシを果実の状態で混ぜて共に圧搾し、絞った果汁をすぐに発酵してサイダーを作成。約6ヶ月後に単式の蒸留器で蒸留し、ヘッドとテールをカットしたハートの部分のみが瓶詰めされます。

深みのあるゴールデンイエローに輝くカルバドスからは、煮込みリンゴと洋ナシの力強い香りが立ち上がり、アタックは甘く、熟したリンゴを感じるまろやかな味わい。フィニッシュも心地良く続き、食後酒ならば20℃~23℃で供すのがベストですが、食前酒としてなら氷を入れるか水を2滴垂らすことでより香りが開きます。なお、そのままストレートでも十分お楽しみいただけますので、ノルマンディーの恵みを日本の卓上で気軽に享受していただくことが可能です。

今年も梅雨明けから猛暑日が続き、すでに夏バテ気味という方も少なくないことでしょう。そんな季節がら、体に優しい「正統派オーガニックなお酒」を片手に、ゆったりと夏の夜をお過ごしになってみてはいかがでしょうか。

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PERE LABAT BLANC 50%

まるで廃墟のラム蒸留所…その行く末は?~チーフNのグアダループ訪問記~

たった一人のおじいちゃんが素手でかき混ぜ、指で味を確かめ、雨水を使って加水する…そんな半信半疑の逸話と共に、日本中の愛好家が酔いしれた「ペールラバ」というラムがあります。

私がマリーガラント島にあるペールラバを訪れたのは、もう10年も前の話です。オーナーの変更に伴い生産が一時的に止まっていた頃だったのですが、実はそんなことはどうでも良かったのです。いったいどんな蒸留所なのか、いや本当に存在する蒸留所なのか…と、ドキドキしながら訪れたことを思い出します。

東京23区の4分の一の広さしかないマリーガラント島、一本道なので迷うはずはないのですが、草木が生い茂る景色の中を延々と走っても蒸留所らしきものが見当たりません。念のため引き返してみると、傍らに「Distillerie Poisson(ポワソン蒸留所)」という小さな標識が。その矢印の方向へさらに狭くなった砂利道をしばらく走ると、ようやく景色が抜け、幾つかの建物が見えてきたのです。

そこでは炎天下、一人の男性が黙々と作業をしていました。聞くと、古くなった設備を補修しているとのこと。しかし中を見渡す限り、そこはまさしく「廃墟」。蒸留器が見えるので、今いる場所が蒸留所だとかろうじて認識できますが、それがなければ倒産した町工場そのものという有り様。配電盤はあるものの、電気は通っているのかどうか。もう何十年も使われていないであろう、先ほどのものとは別の蒸留器の残骸も遠くに見えます。トタンの屋根は錆び付き、所々に蜘蛛の巣も張っています。

本当にこの蒸留所は再稼働するのだろうか?
使える設備は補修して使うというが、そんなことは夢物語ではないのか?

――それから何年も経った後、ペールラバを訪問したという方に話を聞くことができました。その話によれば、あの廃墟は改装が施されたのち生産も再開され、今ではショップも充実しているとのこと。

しかし、私には信じられません。この目でもう一度確かめてみるまでは、その存在を心から信じることができない。 ペールラバは、そんな蒸留所なのです。

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SAINT ETIENNE EXTRA VIEUX KILCHOMAN CASK FIN

それはアイラの波しぶき、はたまたカリブのパイナップル?二つのアロマが見事に融けこむ、アイラモルトフィニッシュ・ラム!

「サンテティエンヌ」という名前は、その歴史を16世紀まで遡ることができます。

当初は砂糖の精製工場として建設された地所でしたが、1882年、アメデ・オーベリー氏というマルティニーク経済の立役者ともいえる人物が同所を買収。そしてオーベリー氏は製糖工場をラムの蒸留所へと改築し、インフラの近代化に着手したのです。

所内には28にも及ぶアーチ形の窓を備えた美しいファサードが構築され、工場に最適な換気がもたらされました。また、蒸留所の近くには鉄のレールが敷かれ、家畜がサトウキビを積んだ台車を牽引、レザルデ川から引いた水はクレオール庭園を横切る運河によって、水力エネルギーとして活用されました。

その後1909年には後継者のブランシェ女史に所有権が移行。ブランシェ氏はサトウキビ農場長であったアンドレ・シモネ氏と結婚し、蒸留所はその子から孫へ代々受け継がれ、1960年代の末には「サンテティエンヌ」という名が広く知られるようになりました。

一家は蒸留所の発展に力を注ぎましたが、自然の脅威・ハリケーンによる大きな被害に見舞われ、図らずもその生産量は徐々に減少してゆくことになります。

そして1994年には、シモン蒸留所のオーナーであるイブ、ホセ・アィヨ夫妻によって蒸留所は再び買収されることに。

伝統的なクレオールスタイルの銅製スチルはシモン蒸留所の敷地内へ移設され、以前からのノウハウを活かしてラムの生産が続けられるようになりました。そして年間わずか数百リットルだった生産量は、移設後約60万リットルにまで一気に増加。まさに息を吹き返す勢いで、活気を取り戻したのです。

また、イブ、ホセ・アィヨ夫妻はサンテティエンヌのブランドを復活させるとともに、地所の建築遺産の修復と補強に着手しました。現在蒸留所はフランスの歴史的建造物の追加目録に登録されており、マルティニークに唯一残る「19世紀末の工業建築」の職人技と審美的価値を示す貴重な資料のひとつと見なされています。

さて、以前からホワイトラムの品質の高さに定評があり、世界で初めて「ビンテージ2000」と銘打たれたホワイトラムをリリースしたことでも知られるサンテティエンヌですが、今回ご紹介するのは「異例の新作」であり「大いなる意欲作」であるアイラモルトフィニッシュのラム「エクストラ・ビュー キルホーマンカスク フィニッシュ」です!

こちらはモルト好きにはおなじみ、アイラシングルモルト「キルホーマン」の樽でフィニッシュをかけた魅力あふれる一本。以前もアイラモルトフィニッシュのリリースはありましたが、蒸留所名が明記されていなかったため、ややもどかしさを感じられたモルトファンの方もいらっしゃったことでしょう。しかしボトルと箱にしっかりと「キルホーマン」のロゴが入った今作は、人気モルトとの繋がりが明示されていることで、絶大な人気を誇るアイテムとなったのです。

マキヤーベイに打ち付ける波しぶきを感じる味わいは、モルト好きにはたまらないもの。そしてピーティな香りからトロピカルフルーツが表れてくるというレアなキャラクターの熟成酒は、ラム好きの方でもめったにお目にかかれないものであるはずです。

モルトを愛する方、ラムを愛する方、いずれも大満足いただけること請け合いの「絶対に買いの一本」、どうぞお見逃しなく!

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RHUM JM MULTIMILLESIME 2003-2004-2005

サトウキビのほとばしり、ペレがもたらす清い水 ー 三年分の恵みが詰まった、マルチミレジム・ラムの実力!

「ラムJ.M 」は1845年に創業したマルティニークの蒸留所。大農園主を父に持つマリー・ファーメン氏と結婚したジーン・マリー・マーティン氏が、ペレ山の麓にあるフォン・プレヴィルの製糖工場を買い取り、これをラム蒸留所に改築。そう、ラムJ.Mの「J.M」は、氏の「Jean-Marie Martin」のイニシャルに由来しているというわけです。

ジーン・マリー・マーティン氏が1868年にサン・ピエール村で亡くなった後、蒸留所はさまざまな所有者に買収され続けましたが、1914年にクラスース・ド・メデュイール家が同所を購入、フォン・プレヴィルとベルヴューにあった二か所の土地を一つの大農園に統合させました。さらにその後2002年にはマルティニークのベルナール・アヨ・グループがラムJ.Mの蒸留所と商標を取得し、ブランドと資産に再投資を行ったことで、世界で最も優れたラム・ブランドの一つとしての地位が築き上げられたのです。

さて、AOCマルティニーク規格に準拠したアグリコールラムをメインに生産しているラムJ.Mですが、その特筆すべき点は「マルティニーク島で唯一、原料のサトウキビを全て自社畑でまかなっている」ということです。

「いかにフレッシュなサトウキビジュースを用いるか」がアグリコール製法においては非常に重要になってきますが、ラム J.Mの場合は自社畑が蒸留所の周辺にあるため、サトウキビが畑から発酵タンクまで運ばれるのに一時間もかからないのです。「これほど新鮮な状態でサトウキビの圧搾が行える蒸留所は、世界広しと言えど他にはないでしょう」と自ら胸を張って述べていることからも、この事が如何にラム J.Mのアドバンテージになっているかがお分かりいただけるはずです。

また、ペレ山からもたらされる素晴らしい湧水も、ラム J.Mの品質に貢献している大きな要素です。獲れたてのみずみずしいサトウキビと、こんこんと湧き出る並外れた品質の澄んだ水…この二つを組み合わせただけで、すでに美味しい飲み物が出来上がることが容易く想像できますね。

さらにラム J.M はAOCマルティニークラムの中でも熟成に使う樽への強いこだわりがあることで知られています。樽のコンディショニングは自社で行っており、ラムに風味を与えるべく樽の内側を直火で焼く「チャー」も社内管轄の作業になります。そして念入りな作業で樽に付けられたきれいな焦げ目は、蒸留過程で生じた硫黄のような好ましくない風味を取り除くカーボンフィルターの役割を果たすのだといいます。

ちなみに2017年から蒸留所のセラーマスターを務めるカリーヌ・ラサル氏は、さまざまな種類のフレンチオークとアメリカンオークを使い分け、同時に樽のチャー(焦がし)加減を微細に調整することで、次々とユニークな傑作を作り上げているそうです!

カリーヌ氏のような女性をセラーマスターに就任させるなど先進的な経営方針をとっているラム J.M ですが、サスティナビリティへの取り組みにも積極的です。サトウキビの搾りかすである「バガス」は燃料や肥料として再利用され、所内を走る車は電気自動車、プラスチックのコップは段ボール製のものに置き換えられ、すべての廃棄物はリサイクルに回されているということです。

このように意欲的な取り組みに次々と挑戦し続けているラム J.Mが、ビンテージの個性を楽しむ醍醐味を持つアイテムとして造り上げたのがこちらの「マルチミレジム 2003-2004-2005」!

その樽へのこだわりからウイスキー愛好家のファンが多いラム J.Mですが、今までリリースしてきたシングルビンテージの熟成アイテムもすべからく高い人気を誇るもの。そして今回のボトルは2003、2004、2005年の3つのシングルビンテージをブレンドしており、今日のラム価格高騰の渦中にあって、極めて高いコストパフォーマンスを発揮する仕上がりになっています。

ジャムのような濃厚なフルーツ感、アンズやクルミ、ヘーゼルナッツといった香ばしく力強い風味が複雑に絡み合った甘く官能的な味わいは、J.Mらしさを存分に感じられるもの!

ミシュラン2つ星レストランでも継続的に取り扱っていただいているその実力…伊達ではないことをぜひご自身でお確かめください!

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RED DOOR GIN

Open the REDDOOR!ベンロマックの赤い扉は、ジン新時代へのエントランス!

2019年に日本初上陸を果たして以来、各地の試飲会で好評いただいてきたジンがあります。

その名も「レッドドア ジン」。

独立瓶詰業者として名高いゴードン&マクファイル社(以下GM社)が125年以上にわたって培ってきた「クオリティコントロールの真髄」が惜しみなく注がれている新作ジンですが、実はこちらの生産を行っているのは、これまた多数の受賞歴を誇るシングルモルトスコッチウイスキー生産者であり、GM社が所有する「ベンロマック」なのです。

レッドドア ジンの蒸留はベンロマック蒸留所の隣にある古い麦芽小屋(モルトバーン)で行われており、この小屋の扉が目の覚めるような赤い色をしていることから、ジンの名前が決まったのだそう。なおジンが入ったボトルも同様、はっとするような美しい赤色です。

スコットランドの山、森、そして海岸にインスピレーションを得て生み出されたというレッドドア ジン。使われているのは八種の最高級ボタニカルですが、まずは「地元・ハイランドにインスパイアされ選ばれた」という三つの「ローカル・ボタニカル」をご紹介しましょう。

「シー・バックソーン(Sea Buckthorn)」は「シーベリー」という名でも知られる植物で、スコットランドの沿岸周辺に自生しています。さわやかで温かみのある柑橘系のフレーバーは、ジンにフレッシュでフルーティーなトップノートを与えているとのこと。ちなみに豊富な栄養素を含むスーパーフードとして注目されている「サジー」は、このシー・バックソーンの別名であり、同じ植物なのだそうです!

さて、二つ目のローカル・ボタニカルは「パールズ・オブ・ヘザー(Pearls of Heather)」。日本では「エリカ」と呼ばれ、紫色の花が美しい低木として知られるヘザーの「エッセンス」的なものと考えて良いでしょう。ヘザーはスコットランドの風景を構成する象徴的な存在であり、初夏と初秋に開花すると、丘の中腹に明るい紫色の花霞が現れるのだそう。そしてそのフレーバーはレッドドア ジンに草が生い茂る丘を思わせるフローラルな香りを添え、バラの花びらやカモミールなど一般的なジンにおけるトラディショナルな花の基調に、スコットランド独特の風味を加えるのです。

三つ目のローカル・ボタニカル「ローワン・ベリー(Rowan Berry)」は、秋に真っ赤な実をつけ目を楽しませてくれる美しい落葉樹で、日本では「セイヨウナナカマド」という名で知られています。スコットランドの森や峡谷でもよく見られ、その豊かなフレーバーは少しほろ苦く、どこかチョコレートを思わせるスモーキーな含みがあるとのこと。これはレッドドア ジンのフレーバーにおける微妙なほろ苦さという側面を構築するための、重要な要素の一つになっています。

これら三つのローカル・ボタニカルのほかに、ジンではおなじみのジュニパーベリー、コリアンダーシード、レモンピール、ビターオレンジピール、アンゼリカルートなどの五種の「クラシック・ボタニカル」が用いられており、これらは複雑な味わいと甘美な余韻をもたらすロンドン・ドライジンのベースを築いています。

そしてボタニカルの香味は「蒸気注入蒸留法」という、温めたベーススピリッツから立ち上る蒸気にゆっくり間接的に移す方法でジンに籠められるのですが、この蒸留に使われるのが「ペギー」という愛称で呼ばれるハンドメイドの銅製スチル。この「ペギー」という名はGM社の二代目であるジョージ・アーカート氏の妻、ペギー・アーカート氏から採られており、同社の誇りと愛情が感じられます。

鮮やかなシトラスの風味、際立つ力強さを持った最高級のジュニパーに香り高いボタニカルの数々が融け込んだレッドドア ジンは「ジントニックやマティーニに最適な作品」とGM社も胸を張っており、実際に英国の名だたるスピリッツスペシャリストが審査にあたるコンテスト「Gin Masters 2020」では、ロンドン・ドライジン部門で金メダルを受賞しています!

昨今のジンブームで巷にさまざまなジンがあふれている中においても、埋もれることのない香り高さを誇るレッドドア ジン。楽しみ方はストレートでもロックでも、あるいはその芳しい香りを活かしたカクテルでも。クラシックなジントニックから、絹のように滑らかなマティーニ、そして洗練されたネグローニなどはもちろんのこと、例えば「リキュールの女王」と称されるシャルトリューズの複雑な香りとマッチングさせたレッドドア版「ラスト・ワード」などはいかがでしょう。

ジンのニューワールドへ誘う扉として掲げられた「レッドドア」――かの英国のロックバンドも、さすがにこのドアを黒塗りにするのは躊躇ってしまうのではないでしょうか?
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KINGSBURY DEMERARA RUM GLENROTHES CASK

十年ぶりの復活劇から、順風満帆航行中!ガイアナ生まれのデメラララムは、スコットランドで転生を遂げる。

デメラララムは、南米ガイアナ共和国のデメララ川沿いで生産されているラム。「ガイアナ」の語源は現地人アラワク族の言葉で「豊かな水の地」という語にあるとのことで、事実ガイアナには1,000kmにも及ぶエセキボ川や、ナイアガラの五倍もの高さを誇るカイエチュールの滝など、多くの川や滝が存在しています。そしてその中の一つがデメララ川であり、このデメララ川沿いで造られるラムが「デメラララム」と呼ばれているのです。ちなみにデメララといえば、ザラメより少し小粒のブラウンシュガーである「デメララシュガー」でも知られた名であり、日本ではこの語を名に冠したペストリーショップが話題を呼んでいましたね。そう、この茶色いお砂糖の発祥地もガイアナなのです。

「キングスバリー デメラララム ダブルマチュアード グレンロセス カスク」は、この高温多湿のガイアナで蒸留、熟成させたデメラララムをはるか遠くスコットランドまで運び、インディペンデント・ボトラーであるキングスバリー社の手で良質なシングルモルトウイスキーの樽に詰め、冷涼かつ穏やかな気候の中でゆっくりと後熟させた「ダブル熟成」のラム。

モルトの樽で熟成させたラムといえば、以前本コラムでもアイラシングルモルト「キルホーマン」の樽でフィニッシュをかけた「サンテティエンヌ エクストラ・ビュー キルホーマンカスク フィニッシュ」をご紹介したことがありますが、今回のデメラララムは、かの有名な「カティーサーク」や「フェイマスグラウス」などのキーモルトとして知られる「グレンロセス」の樽で熟成させたもの。

オフィシャルボトルのビンテージ品が有名なグレンロセス蒸留所ですが、キングスバリー社では特に際立った個性を持つ樽のみを厳選し、樽出しでボトリングする「カスクストレングス」シリーズ(通称「キングスバリー・ゴールド」)でグレンロセスのアイテムを複数リリースしており、これらのウイスキーも大変好評をいただいておりました。

そんな辣腕ボトラーであるキングスバリー社が樽の目利きを活かして臨んだのが、ガイアナ生まれのデメラララムを選り抜きのモルト樽で熟成するプロジェクト。実はこの「キングスバリー デメラララム ダブルマチュアード」シリーズ、キングスバリー社の中でも歴史的なアイテムと言われており、昨年2020年になんと10年ぶりに復活を遂げたという飲み手待望の作品なのです! ちなみに復活後のファーストリリースは、ピートがしっかりと効いた「ラフロイグカスク」熟成のアイテムで、こちらは人気沸騰で即完売。その後もボウモアカスク、蒸留所はシークレットとなるスペイサイドシングルモルトカスクなどのバージョンがリリースされてきましたが、いずれも高い人気を集め、完売御礼となりました。

そして時は満ち、今年2021年に世に放たれたダブル熟成デメラララムがこちらのグレンロセスカスク・バージョン!言わずもがな皆さまのご期待通り、グレンロセスの特長であるスパイシーな甘みとドライフルーツのニュアンスがデメラララムと絶妙に融合した逸品に仕上がっており、度数は62%というハイプルーフ、後熟させたものとしては非常に濃い色合いになっているのも注目したいポイントです。

キングスバリー社が満を持して復活させた、ラムとモルトの融合「キングスバリー デメラララム ダブルマチュアード」。一樽分のみのボトリングのため、生産本数はごくわずか…もし幸運にも出会うことができたのなら、二種類の樽の個性を併せ持つこのラムは、間違いなくあなたを驚かせてくれることでしょう。
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RHUM CLEMENT CREOLE SHRUBB LIQUEUR D’ORANGE

今年のイブは、オレンジカラーで!カリブの乾杯カクテル「シュラブ」を片手に、堪えた夏のリベンジを!

クリスマスと聞いて思い浮かぶフルーツは何でしょう?純白のショートケーキに載った真っ赤なイチゴ、それとも可愛らしく飾られたツリーオーナメントのリンゴでしょうか?

ところで意外なことに、ヨーロッパでのクリスマスの定番フルーツに「オレンジ」があることを皆さまはご存知だったでしょうか。

かつてのヨーロッパにおいてまだオレンジが高級品だった頃、一年のうちでも特に手に入りにくい冬の貴重なギフトとして、明るい太陽を思わせるこの果物は人気があったのだとか。しかしそれ以外にもオレンジはクリスマスにゆかりのあるフルーツとして知られており、それはサンタクロースのモデルである聖ニコラウスの逸話に由来しているのです。

昔、ある街の店主が三人の娘たちの嫁入り持参金を用意できず困っていましたが、そのプライドゆえ他人からお金を恵んでもらうことは拒否していました。それを知った聖ニコラウスは、店主を秘密裏に助けようと金貨の入った袋をその家の煙突からこっそり投げ入れたのです。金貨は偶然暖炉の前に干してあった靴下の中に入り、それを見つけた娘たちは無事持参金を携え、お嫁に行くことができました。そしてこの金貨を象徴するものとして、クリスマスの靴下にはオレンジが入れられるようになったのだそうです。

このようにヨーロッパでは定番のクリスマス・フルーツであるオレンジですが、カリブ海に浮かぶフランスの海外県でも、クリスマスにオレンジ風味の「シュラブ」というカクテルを家族や恋人と楽しむ習慣があります。そしてそんなエキゾチズムたっぷりの「シュラブ」を、グラスに注ぐだけで楽しめる大人気アイテムが「クレオール シュラブ リキュール ドランジュ / クレマン」なのです!

JISでは多数のラムを取り扱っていますが、その中でも「クレマン」はAOCマルティニークを体現する生産者です。始祖となるのは、フランスのメディカルスクールを卒業した後、故郷のマルティニーク島で医師となったオメール・クレマン氏。氏はフランスで医学博士号を取得した最初の有色人種でもありました。政治にも敏く、ル・フランソワの市長も務めたオメール氏が1887年に砂糖のプランテーションを購入、アグリコール製法によるラムの生産を開始したことでクレマンの歴史は始まったのです。

1902年、三万人もの犠牲者を出したペレ山の壊滅的な噴火災害を受け、オメール氏は急遽マルティニーク市長代理に就任。このポストの影響力と革新的な思考を組み合わせ、氏は砂糖商取引の崩壊以来深刻な苦戦を強いられてきたマルティニーク経済の救済に乗り出します。すなわち、それまでもっぱら糖蜜から造られていたラムを地産のサトウキビのジュースから生産することを奨励し、砂糖の生産プロセスを削減、島の豊富な資源であるサトウキビをダイレクトに利用することで、ラム生産における大いなる転換を図ったのです。

そして1917年には「アビタシオン・クレマン」を建設、ここから世界に認められるアグリコール・ラムを送り出すまでに至ります。これを後ろ盾にマルティニークは不況から脱し、オメール氏は「アグリコール・ラムの父」と呼ばれ、讃えられるようになったのです。

そんな130年を超えるブランドの歴史もさることながら、ブランデーと間違えてしまいそうなほど香り高いラムを造り続けている名門クレマンですが、特にワインに代表されるようなブドウ由来のお酒を愛好する飲み手の皆さまから圧倒的な支持を得ているのも大きなポイント。より香りを引き立たせる加水とブレンドの技術は他と一線を画していると言ってよく、率先して世界的なカクテルコンペを主催するなど、マルティニークラムのリーダー的ブランドとしてラム初心者の方にこそ飲んでいただきたい銘柄でもあります。

今回ご紹介する「シュラブ」は、アグリコール製法で造られたラムブランと熟成ラムを巧みにブレンドし、天日干しのオレンジ果皮や果肉、そしてクレオールスパイスを浸漬して完成させた、マルティニークではおなじみのリキュール。

各生産者秘蔵のレシピで造られるシュラブですが、このクレマンの「クレオール シュラブ リキュール ドランジュ」は特に海外市場において非常に人気が高く、パリ・ラム・フェスティバルやビバレッジ・テイスティング・インスティテュートなどのコンクールで金賞・銀賞を多数受賞しており、かの『ニューヨーク・ポスト』紙からは「グラン・マルニエ(有名な仏産オレンジ・リキュール)よりも明らかに深みのある味わいで、より滑らか」との賛辞を受けているのです!

2021年の年末も迫ってきましたが「今年の夏はコロナでどこにも行けなかったな…」という方も多いことでしょう。そんな年のクリスマスは、南国カリブの明るい光をたっぷり感じられる「シュラブ・カクテル」で陽気にお祝いしてみてはいかがでしょうか。

難しい話は一切なし!氷を入れたグラスにお好きな量の「クレオール シュラブ」を注ぎ、トニックウォーターで割ったらスライスオレンジをちょっと搾ってあっという間に完成です。そしてこのカクテル、簡単なだけでなく女性にも大変飲みやすい仕上がりになっているのが嬉しいところ。映画などを観ながら楽しめば、思わず次々と杯を重ねてしまいそうです。

こだわりのオレンジ・クリスマスを演出するなら、オーナメントやディナーにもひと工夫してみるのが良いでしょう。例えば丸ごとオレンジにクローブとシナモンをあしらって作る、ヨーロッパの香り高い伝統的クリスマス・オーナメント「オレンジポマンダー」。これは古くから魔除けやお守りとして受け継がれてきたもので、14世紀のペスト大流行の際にも重宝されたそうです。そしてテーブルには、ロースハムの塊にオレンジママレードとオレンジジュースで作った特製ソースを塗り、オーブンで焼き上げた「クリスマスハム」を供してみてはいかがでしょう。こちらはニュージーランドのポピュラーなクリスマス料理ということで、また違った異国情緒を味わえるのでは。

部屋中にオレンジのさわやかな香りが漂う中で、世界各国からお墨付きを得た最高の「シュラブ」をゆったりと味わう…今年のクリスマスに、ウイルスの付け入る隙はありません!
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CALVADOS DOMAINE DELAUNAY 42YO DECANTER

発掘?出土?もはやこれは文化遺産!二度と出てこぬ古酒カルバドスは、ノルマンディーの回顧録。

今でこそ有名なカルバドスのブランドはいくつかありますが、そんな専業メーカーのブランドが誕生する以前から、原産地のノルマンディーでは農家が自ら育てたリンゴを使ってシードルを造り、それを移動式の蒸留器で蒸留して樽に入れ、スピリッツを熟成させていました。

それは自家消費用であったり、時には自らが営む民宿で提供されたりしながら、その技術は親から子へ、世代を超えて受け継がれてきました。こうして造られたカルバドスは、果実味に溢れたものから気高さを感じさせるようなものまで、その年の気候やテロワールによって様々な味わいを見せてくれます。しかし、残念ながら現在ではそのような農家は少なくなってしまいました。

また、ノルマンディーは第二次世界大戦においてドイツの占領下にあり、貧困や抑圧といった困難な状況の中でカルバドスは徴発や強奪に遭い、蒸留器も武器を製造するための銅原料として徴収されてゆきました。このような背景からも、カルバドスの古酒は特に入手しにくい大変貴重なものとなってしまっているのです。

そうした中で、JISは瓶詰め業者と交渉を重ね、秘伝のレシピを持つ農家による「絶滅寸前」のカルバドスを日本の皆さまにご案内してまいりました。今回ご紹介する「カルバドス ドメーヌ ドロネー 42年 デキャンタ」も、そんな貴重極まる秘蔵の一品です!

造り手は、AOCカルバドスのニオール・ラ・フォンテーヌ村のロジャー・ドロネー氏。しかしドロネー氏は1977年の蒸留を最後に引退、一家はすでに廃業しており、氏の原酒を手に入れることは二度とできないのが現実です。

使われているのは、1974年に収穫したリンゴ。ちなみにフランスのボルドーならびにブルゴーニュにおける1974年ビンテージの評価は惨憺たるもので、かの一級シャトー「オー・ブリオン」ですらパーカーポイント76点という酷評を受けているのです。そのような背景からも、1974年のフランスものに限っては、ワインよりもカルバドスなどの蒸留酒の方がバースデーギフトとして相応しいかもしれません。

さて、その1974年産のリンゴを1975年に蒸留し、出来た原酒をオーク樽で42年ものあいだ熟成、それを一切加水することなく特注デキャンタに瓶詰めしたのがこの貴重なボトル。リンゴ60%、洋ナシは数種類合わせ40%も使われており、優美で官能的な芳香があふれる絶品の古酒に仕上がっています。JISでは残っていた在庫を取り急ぎすべて確保しましたが、残念ながらもうこれ以上の入荷は一切ございません…。

ノルマンディーの風土や魂をその身に籠め、長い眠りについていた類稀なるカルバドス…「遺宝」とも「骨董的作品」とも言える一本が、静かに目を覚ますその瞬間に立ち会ってみたくはありませんか?

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VALDESPINO APERITIFS VERMOUTH & QUINA

「良薬口に苦し」は過去のこと ー 美味しく楽しく元気になれる、名門ボデガの新生アペリティフ!

お祝い事の多い12月。ちょっと気合いを入れたおうちディナーが待っている帰り道で、プチ贅沢なワインを調達するという方も多いでしょう。しかしこれらワインとは別に、スペシャルな「アペリティフ(食前酒)」まで準備するという向きはまだ少数派なのでは?

それは、ちょっと勿体ないかもしれません。たとえばレストランでは「まずはお飲み物を」選ぶのが通例ですし、和食のコースでも最初に果実酒などが供されることが多々あるでしょう。ふだんお酒をたしなまない方でも、旅先の宿のお食事に添えられた甘い食前酒などにはつい手が伸びてしまうのではないでしょうか。

そう、メインのお食事はもちろんのこと、その序奏として気持ちをぐっと華やかにしてくれるのが大いなる前座「アペリティフ」なのです。定番のビールやスパークリングワインも良いですが、今年はディナーをひときわ本格的に、そして手軽にレベルアップしてくれる上質なアペリティフを用意してみませんか?

アペリティフの歴史はBC5世紀、古代ギリシアの医師ヒポクラテスがワインにニガヨモギの花とハーブを漬け込んだことに始まります。医学の父と崇められるヒポクラテスは、傷の消毒、解熱、疲労回復などワインそのものの効用についても多くの述懐を残しており、欧州冬の風物詩・ホットワインを「ヒポクラテスの袖」と呼ぶこともあるのだとか。そんな価値ある液体に、これまた健胃や虫下しの効果があるとして重宝されていた非常に苦い薬草・ニガヨモギを漬け込むのですから、ヒポクラテスとしては最高レベルの効能を期待していたのではないでしょうか。ただ、当時におけるその味わいを想像すると…おそらく笑顔で楽しめるようなものではなさそうですね。

さて、時は進んで18世紀後半、滋養強壮や食欲増進を目的としたお酒「ベルモット」がイタリアで生まれます。白ワインをベースにハーブやスパイスを調合して作られるフレーバードワインのベルモットですが、その語源はドイツ語の「ニガヨモギ(wermut)」に由来しており、もちろんこの古来からの薬草も材料として使われています。イタリアを発祥としてフランス、スペインなど世界中に広まっていったベルモットは、イタリアではビターに、フランスではドライに、そしてスペインではより甘くて軽いものに進化してゆきました。いずれも食いしん坊なお国柄ゆえ、よりその国の人々の口に合うよう改良が重ねられていったのでしょう。

シェリーの名門・バルデスピノ社にも20世紀初めにはこうしたアペリティフを製造していた記録が残っており、その後も伝統的な製法が受け継がれてきました。そして2021年、満を持し二種の新作アペリティフが誕生することとなったのです。

バルデスピノ社が長年大切に守り続けてきた異なるソレラからの古酒に、様々なボタニカル、天然抽出液、フルーツなどを漬け込むことによって造られた食前酒は、それぞれ「ベルモット」「キナ」と名付けられ、同社の新たな秘蔵品として皆さまの前に登場を果たしました。20世紀初頭のラベルとレシピを復活させ、VOS(Very Old Sherry:熟成20年以上)、VORS(Very Old Rare Sherry:熟成30年以上)クラスの熟成オロロソをベースにしたこの画期的新商品は、へレスの他のボデガでも例のないものです。

まずご紹介するのは、バルデスピノ社の個性的なシグネチャーアペリティフとなる「アペリティフ ベルモット」。こちらはVOSオロロソにモスカテルをブレンドしたベースに、エルダーベリー、コリアンダー、カモミールなどのさまざまなスパイスやハーブを浸漬してオロロソ樽で熟成した作品。

明るいマホガニー色をしており、ノーズにはオロロソ・シェリーの含みを持つ鮮烈でスパイシーなアロマが。口に含むと、オレンジをはじめとする柑橘系のノートに、クローブやゲンチアナ(リンドウ)といったスパイシーな香りが素敵に広がります。エレガントで包み込むような苦味は、複雑かつ滑らかな味わいを生み出し、心地よい温かみとほのかに甘い後味に唸らされるはず。

全ての原料が渾然一体となり、贅沢なアロマと凝縮された複雑な味わいをもつ逸品ですが、供し方はごく簡単。氷を入れたタンブラーに注ぐだけでOK、且つそこにグレープフルーツかオレンジのスライスが添えられれば、もう言うことなし!ナッツ、オリーブ、ピクルスといった前菜から、アンチョビなどを使ったタパスと見事なマリアージュを見せてくれます。

もう一つの「アペリティフ キナ」はオロロソとペドロヒメネスをブレンドしたベースに、キナの皮、ゲンチアナの根、天然リコリス抽出液、ナツメグ、ドライグレープフルーツやセビーリャオレンジなどを浸漬して造られます。ちなみにキナは南米熱帯山岳地帯に分布する常緑高木で、その樹皮を天日乾燥したものが「キナ皮」という生薬になります。主成分となる「キニーネ」についてはご存知の方も多いかもしれません。何と言ってもあの恐ろしい伝染病「マラリア」の特効薬というのですから、その薬効にはひれ伏すしかありません。また、マラリア予防薬から派生した「トニックウォーター」の材料としても、お酒好きに知られるところでしょう。

柑橘類とスパイス、甘みのコンビネーションが特徴で、熟成に使われたオロロソ樽の甘さがさらに呼び起こされてゆくのが印象的。また、スタイリッシュな柑橘系のタッチとキニーネの苦味が、温かく長い余韻をもたらします。こちらもベルモットと同じくタンブラーに注ぐだけで完璧な食前酒になりますが、そこにシナモンスティックやひねりオレンジを加えてみたり、ちょっと張り切ってマンハッタンなどの本格カクテルに仕立ててみるのもおすすめです。合わせるのはやはりベルモット同様、オリーブ、ピクルスなどさまざまな前菜と!

熟成20~30年というあまりに贅沢なベースワインに、秘伝ともいえる種々のボタニカルを加えて熟成した二種のバルデスピノ・アペリティフ。ちなみに1920年代当時のラベルには「病気の強壮剤」を意味する言葉が書かれていたそうで、うんざりするほどコロナに振り回された2021年という年を乗り切るにあたり、この二つはこれ以上ないエナジードリンクかもしれません。

食前酒の概念を覆す強烈な「ベルモット&キナ」で、心と体に美味しく楽しく活力を注入!

自作のニガヨモギ漬けワインがこれほどまでに素晴らしい進化を遂げるとは…ヒポクラテスも冥界(ハデス)でしみじみ感じ入ってくれているのではないでしょうか。

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PAUL GIRAUD JUS DE RAISIN GAZEIFIE

年に一度のジュースといえば…! 誰もが愛し、誰をも満たす、ポールジロー スパークリング・グレープジュース!!

「ポールジローのジュースは、どこで買えますか?」

JISに寄せられる一般のお客様からのお問い合わせで一番多いのが、ポールジロー・ジュースについてのものです。また、その際に皆さまが口をそろえておっしゃるのが「以前飲んでとても美味しかったので、ぜひ今年も手に入れたい」ということ。そう、誇張ではなく「一度飲んだら忘れられない」、ジュースの既成概念を超えたジュースが「ポールジロー スパークリング・グレープジュース」なのです。

ときに私たちがグレープジュースと聞いてまっさきに思い浮かべるのは、明るい紫色をした炭酸飲料か、濃紫色の濃縮還元ジュースなのではないでしょうか。しかしポールジロー・ジュースの有りようは、こうした一般的なグレープジュースとは全く異なるもの。

まず色合いはブドウが収穫された年によって違い、ある年には淡く上品なイエローだったものが、別の年にはリンゴの蜜のような黄金色をしている、というようなこともままあります。そして味わいですが、口に含んですぐに「これはブドウのジュースだ」と分かる方は、逆に少ないかもしれません。例によってビンテージごとに異なりますが、その味わいにはリンゴやモモ、柑橘類のようなニュアンスも感じられ、単純なグレープジュースというより「ただただ美味しい果物のジュース」という印象があるのです。

これは、ポールジロー・ジュースの原料となるブドウがコニャックに使われる「ユニブラン種」であることも一つの要因となっているように思われます。生の果実をそのまま食べるデラウェアや巨峰、マスカットなどの味は私たち日本人にも馴染みがありますが、コニャックやワインの原料が主たる使い途であるユニブランに関しては、いわゆる「ブドウ味」として直観的に認識するのは少し難しいのかもしれません。

しかしワインもまた「直球のブドウ味」のみならず様々な香りと味の要素を包含していることを考えれば、やはりこのポールジロー・ジュースは「一般的なジュースのレベルを超えた複雑さを持つ」特別な作品だと言えるのではないでしょうか。

2003年にお取り扱いを開始して以来、コンセプトや中身は一切変わっておらず、百貨店や有名ホテル、一流レストラン、オーセンティックバーといったお得意様、そして何より「毎年の出来を楽しみにしている」という多くの一般のお客様に支えられ、長い間ご愛飲いただいてきたポールジロー・ジュース。しかし、すべてが順風満帆だったわけではありません。2017年は深刻な天候不良によりブドウの収穫が全く行えず、生産自体が中止になったこともあるのです。その際、ポールジロー氏はこう語りました。

「今年の収穫は皆無に近いでしょう。でも、自分自身はそんなに悲観していません。これが自然を相手にするということです。過去の記録をひっくり返して調べていますが、ジロー家400年の歴史の中で、こういうことは初めてのことではありません。気候が変わっているから全く同じにとは言えませんが、この先人達の経験を持って、私もなんとかこの苦境を乗り越えられると思っています。楽しみにしてくださっている日本の皆さまには、本当に申し訳ないと思います。でも、ブドウは農作物で、これが自然なのです。機械のように、毎年同じというわけにはいきません」

テロワールや自然に対し畏敬の念を持ち続け、自らを”Viticulture”(ブドウ農家)と表現するポールジロー氏ならではの語りというしかない言葉の数々…まったくもって頭が下がります。

気候などの条件に左右されず、常に一定の品質のものを人々に供給すること――それも確かに先人の研究と努力の立派な賜物と言えるでしょう。ただ、そのときどきの自然のありようを素直に受け止め、反映させた素朴な作品にしか成し得ない別格の味わいというものも確実にあるのです。ポールジローのジュースやブランデーは、その事実を静かに、詳らかに教えてくれます。

ちなみにその年の天候や生育状況などをポールジロー氏が直々に語った「ジュース製造裏話」ともいえる収穫レポートがJISのWebサイトにアップされておりますので、これらをお読みいただければジュースの味わいもまた格別なものになることでしょう。

綺麗な酸味が品のある甘みをしっかりと支えており、食事中でも十分に楽しめるジュースはお酒を控えたい大人のお客様にも大変好評で、レストランではシャンパーニュのようにフルートグラスでご提供することでとても喜んでいただけるというお話もあります。また、バーではコニャックのチェイサーとしてお出ししたり、ちょっと贅沢に少しだけ冷やしたフルートグラスにポールジロー15年を20ml入れ、このジュースでアップするという粋なご提供もされているようです。

グラン・シャンパーニュのブドウをそのまま搾って炭酸ガスのみを充填して造る、無添加・無着色のナチュラルなスパークリング・グレープジュース。大人も子どもも、お酒好きの方もそうでない方も、飲めば思わず笑顔になってしまうのがポールジロー・ジュースです。

「ブドウをそのまま搾っただけのジュースの味わいが毎年違うのは、私にとっては当たり前のことだよ」と屈託なく笑うポールジロー氏。その大らかで優しい笑顔は、ジュースを通じて私たちにも伝播してくるかのようです。

眉間にしわが寄り、しかめっ面になりがちだった2021年、ポールジロー・ジュースで破顔一笑のフィナーレを飾りましょう!

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PAUL GIRAUD CUVEE SINGULIERE ESSENTIEL #23

「唯一無二」のコニャックが語る、至極の熟成クロニクル。

「キュベ・サンギュリエール」――それは2021年、コニャックの人間国宝と崇められる名生産者・ポールジロー氏が上級者向けコニャックとして「熟成」と「香り」にフォーカスし、造り上げた新たなる作品です。

フランス語で「特別」という意味の名を持つこのシリーズは「フルール エ フリュイ(Fleur et Fruit=花と果実)」と「エサンシエル(Essentiel=本質)」という2つのアイテムからなっており、フルール エ フリュイが「香り」に、そしてエサンシエルが「熟成」をテーマに掲げています。

なお、ポールジローのコニャックといえば同じく「特別」の名を冠した「キュベ・スペシャル」がありますが、本作の「サンギュリエール(Singuliere)」という語には「唯一無二の」というニュアンスもあり、まさに別格中の別格と言える作品に仕立てられているのです。

さて、熟成に焦点を当てたこちらの「エサンシエル」。グランシャンパーニュ地方のコニャックは、長期に熟成されることでその持ち味と本領を発揮します。長い眠りを経たコニャックだけに授けられる、この世のものとは思えないほどのまろやかな味わいとスパイシーなアロマ。「フルール エ フリュイ」で極めた「香り」の河のほとりから対岸へと渡るように、「エサンシエル」では熟した果実がゆっくりとスパイスへと変化する過程を存分に楽しむことができるのです。舌の上に広がる濃厚で複雑な味わいは、熟成が成せる奥深い世界そのものと言えるでしょう。

ほっそりとした気品あるボトルの口を封ずるのは、ポールジロー氏がチョイスした美しい黄金色のワックス。そしてラベルに描かれたスチルポットから滴る雫の画も、実はポールジロー氏自身によるものなのです!

時間の経過と共にあらわれる、繊細な香りの移り変わり。それは長期熟成を経た「唯一無二の」コニャックでしか成し得ないもの。

ポールジロー氏の経験、技術、志が生み出したこの名作を、ぜひ多くの皆さまにお楽しみいただければと思います。

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SAINT JAMES RHUM VIEUX VO

口も八丁手も八丁!マルティニークのやり手が叶えた、ラム・ブランドの大躍進!

「セント・ジェームス」は1765年にマルティニーク島サン・ピエールで創設された蒸留所。セント・ジェームスと言えばマリンボーダーシャツで有名なフランスのアパレルブランドが浮かぶという方も多いと思われますが、フランス語読みではいずれも「サン・ジャム」という発音になります。フランス語圏のマルティニークで、何故セント・ジェームス?それは当初このセント・ジェームス蒸留所が、英語圏の国への輸出を想定していたからのようです。英国をはじめとする幅広い英語圏受けを狙ってのブランド戦略、なかなかの策士であると言えないでしょうか。

さて、その「セント・ジェームス」の名で商標登録を行ったのはマルセイユの才気あふれる貿易商、ポーラン・ランベール氏。商才に長け意欲に満ちたランベール氏は、当時世界有数のラム貿易港として発展めざましく、より組織化されたラム生産が始まっていたサン・ピエールに着目、さっそくいくつかの地所を購入しました。そして1882年に「セント・ジェームス」ブランドを商標登録すると、自ら生産の指揮を執り、サトウキビの栽培から瓶詰めまでの全工程を管理するべく陣頭に立ったのです。

抜け目ない実務家のランベール氏が成したのはこれだけではありません。ラムの瓶詰めにあたり、当時としては他に類を見ない「四角い底面を持つガラス瓶」、すなわちスクエアボトルを採用したのです。これは輸送時の船倉スペースを有効に使い、破損を減らすのにうってつけの画期的対策でした。

1885年、記念すべきセント・ジェームスのファーストビンテージが発表されます。複数ビンテージをブレンドしたラムが市場を占めていた当時、ランベール氏は愛好家向けに「ビンテージ・ラム」を提供するという独創的な切り口でマーケットに参入。晴れてこの1885年ビンテージは、以降脈々と連なるビンテージ・ラムリストの最初の一本となったわけです。

コミュニケーション達者なランベール氏、そのセールスマンシップは留まるところを知りません。広告掲示板では「世界中の医療専門家が推奨する、セント・ジェームスのラム!」と大々的な宣伝を打ち、人々の目を引きつけました。こうした「専門家のお墨付き」が人々にとっていかに魅力的か、ランベール氏もよく分かっていたのでしょう。

さらに1889年には、サン・ピエールの高台に幅30メートル、高さ4メートルの「Plantations Saint James」と記した横断幕が設置されました。さながら「マルティニーク版・ハリウッドサイン」とも言えそうなこの横断幕に船乗りたちはすぐさま注目し、航行の基準点として活用するようになりました。また同時にこの「Plantations Saint James」の看板は、マルティニーク島に上陸するすべての人への歓迎メッセージとして受け入れられるようにもなったのです。遠く離れたマルティニークのことなど、万国博覧会の展示物でくらいしか知る由が無かった旧大陸の人々が、今やこの島を「セント・ジェームス・ラムの国」と呼ぶほどまでに!予想以上のすばらしい宣伝効果…ランベール氏の「してやったり!」という得意顔が目に浮かぶようです。

とはいえ、ランベール氏は口がうまいだけの人物ではありませんでした。非常に早い段階から競合他社との差別化を図り「フランス領西インド諸島の代表的アグリコール・ラム、セント・ジェームス」とラベルに表記していたのです。これは、ラムの原料として糖蜜ではなく「ヴェズー(サトウキビのフレッシュジュース)」そのものを使用していたことを示したものでした。

一般的なラムは、サトウキビジュースから砂糖の結晶を分離して残った糖蜜を発酵・蒸留する「インダストリアル製法」(=工業的製法)で生産されます。しかし「アグリコール製法(=農業的製法)」では砂糖の結晶を分離せず、サトウキビを搾ったジュースをそのまま発酵・蒸留して製造を行います。言い換えれば、サトウキビの砂糖の成分まですべて味わいに生かされる反面、世界で最も生産コストのかかる、とても贅沢な製法で造られたのがアグリコール・ラムだと言えるのです。フレンチ・ラムに対して頻繁に用いられる「良質のコニャックを思わせる豊かで繊細な香り」という表現はまさにこの製法に由来しているのですが、ランベール氏はいち早くアグリコール製法がもたらす価値を見抜き、その値打ちに見合った盛大なプロモーションを行ったというわけです。

以降セント・ジェームスは急成長を遂げ、1895年にはヨーロッパの大都市に販売店をオープンするまでになりました。しかし1902年、サン・ピエールの町をペレ山の大噴火が襲います。3万人もの犠牲者を出したこの災禍の中にありながら、深い谷間に位置していたセント・ジェームスの農園と蒸留所は奇跡的に一部破壊されただけに留まりました。

ペレ山の噴火は黙示録ともいえるほどの大災害でしたが、その後もラムの需要は変わらず高かったため、蒸留所は迅速に活動を再開しました。第一次世界大戦では兵士に送られた小包の中にセント・ジェームスのラムが含まれていたことも記録されています。

時は過ぎ1973年、セント・ジェームスは新たな転機を迎えます。コアントロー社が蒸留所を買収し、すべての生産を島の大西洋岸にあるサン・マリーに集約、新しい蒸留所を設立したのです。太陽の光がさんさんと降り注ぐ豊かな土壌に拓かれた広大な畑と蒸留所、その落成式は実に大きなイベントであったそうです。当時フランスの首相だったジャック・シラク氏が農務大臣を伴って島を訪れ、新たなるセント・ジェームスの門出に立ち会ったと聞けば、その注目度の高さがお分かりいただけるでしょう。

いまや50か国以上で販売され、世界で最も売れているアグリコール・ラムとも言われるセント・ジェームス。こちらの「セント・ジェームス ラム・ビュー VO」は200リットルサイズの小さなexバーボンアメリカンオーク樽の原酒をブレンドし、3年以上熟成することで驚くほど複雑な芳香を身に秘めた本物の熟成ラム。樽香とバニラのアタックにスパイスやフルーツの力強いアロマが続き、プラムのようなフレッシュフルーツや、プルーン、アーモンド、胡桃などのドライフルーツと、ローストした風味がほどよく混ざり合い、フィニッシュのバニラ香が全体を引き締める逸品です。

セラーマスターが「熟成ラムのお手本」と太鼓判を押す一本、宣伝上手のランベール氏もこんな会心の作品ならプロモートの腕が鳴るというものでしょう。もしも現代に氏が甦ったなら、SNSを駆使してバズりを画策、ターミナル駅にジャック広告を出したり、大型ディスプレイに巨大猫ならぬ「巨大ラム・ビュー」を出現させたりしたかもしれません。

かつてのランベール氏の縦横無尽な活躍ぶりを振り返ると、それもあり得る話では…と思ってしまうのです。

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RHUM JM 2013 EXCLUSIVE FOR JIS

限定にもほどがある…!単一年かつシングルカスク、ONLY JAPANでリリースされた2013年産ラム!

AOCマルティニークラムの中でも、熟成に使用する樽への強いこだわりがある「ラム J.M」。マルティニークをはじめフランス領で生産されるラムの傾向として、フランス人の好みに合わせコニャックのように樽をブレンドして造るのがメジャーだという事実もありますが、その中において樽の個性にこだわり、わが道を突き進む意欲的なラム J.Mのスタイルは、ラムのみならずウイスキー愛好家のハートをも射抜き、着々とファンを増やし続けています。

ラム J.Mが今までリリースしてきたシングルビンテージの熟成アイテムはいずれも人気が高く、高品質揃いのマルティニークラムの中でも確固たる地位を築いています。それもそのはず、同社のビンテージラムはビンテージごとに異なる味わいをダイレクトに感じられるよう、カスクストレングス(加水無し)でボトリングされているのです。これは「新しいビンテージがリリースされる度に、飲み手の皆さまに新しい発見をしていただけるように」という生産者の意向によるものなのですが、さらにラム J.Mのアイテムは他社のビンテージラムに比べても非常に長い熟成を施してからボトリングをし、出荷されるというのですから驚きです!(※マルティニークのビンテージラムはAOCの規定により6年以上の熟成が義務付けられています)

「加水を行わない」「長い熟成期間を保つ」という二つのこだわりによって旨みが凝縮された、まさにワンランク上の一級品に仕上げられているのが、ラム J.Mのシングルビンテージラムなのです。

昨今では熟成したシングルモルトを入手するのもなかなか困難な時代となりましたが、ウイスキーの倍以上の速さで熟成が進むといわれるマルティニークのラムは、ビンテージ品の生産自体が非常に少ないもの。また、最近はマルチビンテージなどの新たなコンセプトのもとに生産される熟成ラムも増えていることから、シングルビンテージラムはモルト以上に品薄になっているように見受けられます。かつてはJISでも1990年代のものをはじめ、さまざまなビンテージラムをご紹介してきましたが、それも今では古き良き時代の話となってしまいました。

たとえばフランス伝統産地のブランデー樽で熟成させた、新しいスタイルの2004年ビンテージ。フランスの伝統的ブランデー「カルバドス」「アルマニャック」「コニャック」より、それぞれ秀逸な生産者の樽を入手し、ラムをこれらの樽でフィニッシュさせることによって新たな味わいを造り出した逸品です。

「ラムJ.M 2000 シルバーラベル」は2000年に蒸留、2009年に47.2%の樽出し度数でボトリングされたもの。伝説のラムオンリーイベント「ラムフェスタ」で先行試飲として出展された際にも各方面から高い評価を受けました。目を引く金属製のラベルは、ミレニアムの記念すべきビンテージとして採用された特別な仕様です。

本革製のラベルが誂えられ、手作り感満点のプレミアムアイテムとして人気を博したのは1994年ビンテージ。大手企業に属さない精鋭蒸留所のこだわりが見える長期熟成の一本は、本国フランスでの評価も非常に高く、権威あるワイン雑誌でも絶賛されました。シガーなどと合わせ、時間をかけてその変化をお楽しみいただきたい作品です。

そしてラムJ.Mが誇るビンテージラムの真髄と言われていたのが、1993年ビンテージ。マルティニークラムはAOCの規定により6年以上の熟成でビンテージを明記できますが、この1993は異例とも言える15年もの熟成が施されていたのです。もちろんカスクストレングスでボトリングされており、アルコール度数は自然に従い低くなった45.8%。革製のラベルを纏い、丁寧に木箱に入れられたラムからはオレンジピールやバナナ、ナッツが感じられる豊かなアロマが放たれ、フルーティーなパパイヤやマンゴーが口の中に広がると、フィニッシュに向けてスパイスやタバコのニュアンスが醸し出されます。

さて、ここまで夢のようなラインナップを振り返ってまいりましたが、今回ご案内いたしますのはそれらに勝るとも劣らない品質を誇る一本…すなわち日本市場のために特別に選ばれ、7年間セラーで熟成された樽から生まれた2013年ビンテージです!

砂糖漬けのフルーツを思わせる香りとナツメグ、バニラ、シナモンなどの風味が繊細に混ざり合ってラムJ.Mならではのエキゾチックかつ濃厚な風味を醸し出している秀作ですが、注目すべきポイントは最強レベルといえる「ストロングチャー(樽の内側を焼くこと)」。パワフルにチャーをかけたセカンドフィルのアメリカンオーク熟成によって得られた香ばしいオークの風味は実に印象深く、ラムを愛する方々の心に深い感銘を与えるはずです。

今や非常に貴重な品となってしまった、マルティニークの樽出しシングルビンテージラム。本作はただでさえ生産量の少ないシングルカスク品であることに加え、セラーマスターが厳選したサンプルをさらにJISが選り抜いた結果、わずか247本のリリースとなりました。10年以上にわたる生産者とインポーターとの固い信頼関係を示すように、ラベルにJISのロゴマークが記されているのも極めてレアな仕様です!

シングルビンテージ、シングルカスク、日本限定リリース――と、スペシャル尽くめのリミテッド・エディション。これを見逃す手はありません!

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NEW GROVE EMOTION 1969

全感情が震えるラム――異なる要素の稀なる調和、これぞ真のエモーショナル!

「ニューグローブ」はインド洋に浮かぶモーリシャス島で造られているインダストリアルラム(サトウキビジュースではなく糖蜜を発酵・蒸留する「インダストリアル製法」で生産されたラム)。しかしインダストリアルでありながら、ニューグローブでは発酵は最長32時間継続、蒸留後の原酒にはノンアルコホーリックパート(純粋なアルコール成分を除いたそれ以外の成分)を1ヘクトリットルあたり200グラム残るようにするなど、独自の製法を追求し、フレーバー豊かなラムに仕上げています。また南国の気候に由来するエンジェルスシェアの多さにも助けられ、熟成年数に比して凝縮感のある厚いボディが高い評価を得ています。

天国に最も近い島とも称され、作家のマーク・トウェインをして「神はモーリシャスを作り、それをまねて天国を作った」と言わしめたモーリシャス島。アフリカ東海岸のインド洋に浮かぶマダガスカル島のさらに約900キロメートル東に位置しており、南北60キロメートル、東西40キロメートル程度の小さな島は「インド洋の貴婦人」と呼ばれるほどの美しさを誇ります。またこの場所は欧州人にとってあこがれの高級リゾート地で、島全体がエメラルドグリーンに輝くラグーン(干潟)に囲まれているため、フランスの詩人ボードレールはこれを賞して「レースに縁どられた島」と詠んだとも。美しい海と世界遺産にも指定されている豊かな自然が人々を惹きつけ、豪華なリゾートホテルで優雅なステイを楽しみながら、ダイビングやクルーズ、アイランドピクニックなどのアクティビティに興ずる観光客で一年中賑わいを見せています。

しかし島自体の歴史は、そのように穏やかなものではありませんでした。かつてはのんびり屋の固有種、ドードーのような鳥も多く生息し、野生動物の楽園といった様相を見せていたモーリシャス島でしたが、1505年にヨーロッパ系としてポルトガル人が初めてこの島を発見、その後1638年にはオランダ人が上陸し、入植を始めました。この時に上陸した「オラニエ公マウリッツ」の名に因んで、マウリッツの英語読みである「モーリシャス」とこの島を命名したのだそうです。

そしてこの入植によりオランダ人が島に持ち込んだのが、サトウキビでした。彼らは島の東部の森を切り拓き、初めてここにサトウキビを植えたのですが、現在延々と広がるサトウキビ・プランテーションはここから始まったのです。また、同時にこの開拓は島古来の自然を破壊する形になり、先述のドードーは乱獲によって絶滅するに至りました。

しかし度重なるサイクロンの襲来、害虫の大量発生、干ばつなどによって疲弊したオランダは、植民地化をあきらめ1710年には島を放棄します。その後誰にも統治されない状態が5年ほど続きましたが、1715年に今度はフランスが上陸、植民を開始。あわせてこの島を「イル・ド・フランス(フランス領フランス島)と名付けました。1735年にはベルトラン=フランソワ・マエ・ド・ラ・ブルドネ総督が島に就任し、海軍基地ポート・ルイ(現在の首都ポート・ルイス)の建設や各種開発を行い、モーリシャスの基盤を作ったそうです。また、オランダ領時代に始まったサトウキビのプランテーションは、この時期モーリシャス経済を支える一大柱となっており、その労働力のために主にアフリカから多くの奴隷が移入されたという歴史もあります。

時は進み1799年、ヨーロッパではナポレオン戦争が勃発します。そして戦時下の1810年12月3日、フランス領のイル・ド・フランスことモーリシャスは、イギリスによって占領されました。 その後1814年に締結されたパリ条約によってイギリス領としての地位が確定し、島の名は旧名の「モーリシャス」に戻されます。

名はモーリシャス島へと改称されましたが、宗主国となったイギリス人の移住は行われず、島内の支配階級は旧来のフランス人のままであったため、言語も変わらずフランス語が使われていたとのこと。ちなみにフランス領時代に発達したフランス語系統の「モーリシャス・クレオール語」が、今もモーリシャスで最も話されている言語だそうです。

1835年にはイギリス議会による歴史的な奴隷解放が行われ、それまで農園などで奴隷として働いていた人々が自由の身となり仕事場を去ったため、不足した労働力を補うため同年にはインドからの大々的な移民導入が開始されました。これにより、1860年代以降モーリシャスで最も多い民族はインド系になったのだといいます。なお、このインド系移民は島の食文化にも大いに影響を与え、魚介類のカレーやビリヤニなど、島国ならではのインド系料理がポピュラーな食事として定着しています。

さて、この時期はサトウキビ・プランテーションならびに製糖業がますます発展し、1970年までは製糖業がモーリシャスほぼ唯一の産業であったとも。現在は国内農地の89.9%がサトウキビ栽培に当てられているという話からも、いかにサトウキビがモーリシャスの柱となっているかが分かりますね。

そして1968年、モーリシャスは英連邦王国として独立を遂げます。エリザベス女王を君主として戴く個々の独立した主権国家である英連邦王国には、他にカナダやオーストラリア、ジャマイカやパプアニューギニアなどがありますが、君主は「君臨すれども統治せず」の原則が貫かれており、初代モーリシャス首相に就任したインド系出身のシウサガル・ラングーラム氏も自ら積極的な産業振興政策を進め、輸出加工区の設置を行うなど工業化を推進しました。その努力の甲斐あって、独立後は高失業率が解消され、繊維産業や観光業の発展で目覚ましい経済成長が実現されたということです。

1992年には英連邦王国から離脱し、立憲君主制から共和制に移行、共和国として現在に至るモーリシャスですが、同国の国旗は赤・青・黄・緑の4色の線が連なったカラフルなデザインのもの。赤は自由と独立のための戦い、青は島を囲むインド洋、黄は独立による新たな光、緑はモーリシャスの一年を通した農業の色を表しているとのことですが、同時に主要構成人種のインド人、アフリカ系黒人、ヨーロッパ系白人、中国人を表すとも言われています。なお住民の比率はインド系が68%、アフリカ系と白人の混血によるクレオールが27%、中華系が3%、フランス系が2%ともされており、使用言語も公用語の英語から読み書き時のフランス語、日常会話でのモーリシャス・クレオール語に加えポルトガル語やヒンディー語、タミル語、テルグ語、客家語など、多岐にわたるそう。もちろん信仰宗教も十人十色といった様相で、ヒンドゥー教52%、キリスト教30%、イスラム教17%、仏教その他1%とさまざまなものが共存しています。

これほどまでに人種・宗教の違いを持った人々が共に暮らすとなると、争いや衝突は避けられないのでは?と思わずにはいられないのですが、東京都とほぼ変わらない面積のこの島で、住民はやんわりと互いの境界を尊重し、また融和させながら生活を営んでいるのです。

それぞれの存在を否定することなく、それらを「すべて在って良いもの」として受け入れる――喜怒哀楽といった感情もどれかを否定すれば歪みが生じ、のっぺりと茫漠とした状態になるか、さもなくば抑圧された要素の逆襲を受けることになるでしょう。

モーリシャスに根付いたブランド「ニューグローブ」が自らの最高傑作であるラムに「エモーション(感情)」という名を付けたのにも、シンプルさゆえの豊饒を感じるというもの。

ラム業界のプロフェッショナルが審査する「インターナショナル・シュガーケーンスピリッツ・アワード」で、世界中の名だたるラムを押さえて最高金賞を受賞した「パワフルなエリクサー(不老不死薬)」のような至上の作品――その味わいに、全感情を揺さぶられてみてください。

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DOMAINE DE LARROUDE 1972・1971

静かなる古豪、アルマニャック――「ブランデーのシングルモルト」は失われゆく白眉の遺宝。

「アルマニャック」というお酒、皆さまはどのような印象をお持ちでしょうか?大手ブランドが軒を連ね、華々しい表舞台に立つことが多い「コニャック」に対し、安価で品質の劣るブランデー…そんな風に思われている方もいらっしゃるかもしれません。

「ブランデー=コニャック」 ――こうしたイメージがいまだに根強いのは、実は上述のような大手ブランドによるマーケティング戦略の成功にほかなりません。そのためワインやコニャックをこよなく愛しているにもかかわらず、アルマニャックには目がゆかず、口にしたことすらないという愛飲家の方も少なくないはずです。

しかし、ブランデーが持つ魅力を最大限に楽しめるのはむしろアルマニャックだといっても過言ではないほど、個性や古酒としての味わいが際立つ「オンリーワン」のジャンルが、このガスコーニュ生まれの蒸留酒なのです。本当にこだわって造られたアルマニャックはコニャック以上に繊細で優雅な味わいを醸し出し、劣るどころか通常のコニャックでは太刀打ちできないほどの高い品質が維持され続けている――実のところ、これが真相と言えるでしょう。

それでは、ここから少しこの銘酒についてご説明してゆきましょう。

アルマニャックはフランスの南西部、ガスコーニュ地方で造られるワインを原料としたブランデーです。最も古い文献によると、アルマニャックの消費の記録は700年以上前の14世紀までさかのぼることが出来るほど。コニャックでブランデーが造られ始めたのは16世紀と言われていますので、より長い歴史を誇る伝統の産物なのです。そしてこのお酒は代々治癒目的として愛飲されてきた歴史があり、フランスの修道師ヴィタル・デュフール師が1310年に記した文献によると、なんと40種類もの効能があるとされています。「もし医学的に節制して摂るならば、この水には40の効能と効果があるといえる。適度に摂れば神経を研ぎ澄まし、過去の記憶を呼び起こし、何より人を陽気にして若さを保たせ老衰を遅らせるだろう」――まさに中世後期におけるカンフル剤!しかしすでにこの時代から、お酒には「飲みすぎ注意」の但し書きがなされていたのですね。

ともあれ実際科学的な観点からも、長期の樽熟成によって発生するポリフェノールやタンニンが体内に与える影響は数多く、アルマニャックの適度な摂取は心臓血栓の原因となる血小板凝集を抑制するなど多くの効能が検証されています。

続いてアルマニャックの生産地域ですが、フランス南西のジェール県、ランド県、ロット・エ・ガロンヌの三県にまるでブドウの葉形のように広がっており、さらにAOCの規定によって「バ・アルマニャック」「アルマニャック・テナレーズ」「オー・アルマニャック」といった三つの呼称で区別されています。 ちなみにコニャックもフランス南西部に位置していますが、ワイン好きの方なら「ボルドーの北に行くとコニャック、南東に行くとアルマニャック」と憶えると分かりやすいかもしれません。

「バ・アルマニャック」はアルマニャックでも西に位置する大変起伏の多い地域。鉄分と酸を多く含有している粘土質と砂地の土壌で、フルーティーで軽く、繊細なブランデーが生まれるとされており、アルマニャックの中で最も高い人気を誇ります。
「アルマニャック・テナレーズ」はアルマニャックの中心に位置しており、非常に硬い粘土と石灰質の多い粘土からなる土壌は、唸るほどのコクがあるブランデーを造り出すもの。長期熟成させるアルマニャックの生産に最適な土地として知られています。
三つの生産地域の中では一番広いものの、その生産量は最も少ないのが「オー・アルマニャック」。ブドウ畑は点在しており、丘には粘土質と石灰質、谷には硬い粘土質が広がっています。

かわって、アルマニャックに使われるブドウ品種についてお話ししてゆきましょう。

まず1878年にフィロキセラによって大打撃を受ける前、専ら畑を占めていたアルマニャックの歴史的なブドウ品種が「フォルブランシュ」。かつて西フランスの大西洋沿岸地方で大量に栽培されていた品種で、非常に酸味が強く主に蒸留酒のベースとして使われていたとのこと。そしてこのフォルブランシュからはフローラルな香りを放ち、特に若いアルマニャックの価値を高める絶大なエレガンスを持った極上のブランデーができるとされています。フィロキセラによるダメージは大きく、現在ではごく限られた地域でのみ栽培されるに留まっていますが、アルマニャックに絶妙な香りをもたらしてくれる立役者的存在です。

「バコ」はランド県で教師をしていたバコ氏がフィロキセラ禍の後に開発した品種で、上述フォルブランシュとノアのハイブリッド。フォルブランシュの代わりとして多く使われ、まろやかさと甘美さが特徴で、長期熟成によって豊潤な果実の芳香を放つブランデーが出来上がるといいます。バ・アルマニャックの砂質土壌に特に適しており、植物検疫処理が少なくて済む丈夫な品種としても知られています。

「ユニブラン」はアルマニャックからコニャック、またスペインのブランデーまで幅広く使われている蒸留酒にはうってつけの品種。コニャックのブドウも約95%がこのユニブランが占めると言われており、ウドン粉病やフィロキセラにも非常に強い抵抗力を持ち、現在も幅広く使用されているとのこと。アルマニャックではバ・アルマニャック、テナレーズの地域で多く栽培されています。

他にもコロンバールなどの品種が使われることがありますが、以上三つがアルマニャックの代表的なブドウになります。ワインのように何百もの品種があるわけではありませんが、蒸留酒であってもブドウによる味わいの差というものは歴然として存在します。フォルブランシュ、バコ、ユニブランという一般的にはあまり聞きなれないブドウですが、それぞれの品種には固有な特徴があり、特に単式蒸留器でニ回蒸留を行うコニャックとは異なり「連続式蒸留器で一回蒸留」を行うアルマニャックはこれらブドウの個性が如実に残りやすいのです。その違いを楽しむことも、アルマニャックから得られる喜びの一つでしょう。

さて蒸留については、収穫から続くその冬場、遅くとも翌年の3月31日までに行われます。代表的な蒸留器は一般的に「連続式蒸留器」と呼ばれるもので、冷却器の中にためられたワインは絶えず蒸留器へと供給され、ボイラーで温められたワインは蒸気となって数ある受け皿のワインの中を通過しながら上昇し、上部のコンデンサー(凝縮器)にて再度液体へと戻り冷却器を通って樽へと詰められます。出来上がりのアルマニャックは無色透明の52度から72度の液体ですが、この時点ですでにフルーティーな香りを有しており、その後の樽熟成でさらに複雑な味わいを身に籠めます。

熟成は、蒸留後すぐにガスコーニュまたはリムーザン産のオーク樽にて開始されます。基本的に最初の数年間は、最良の木材質が溶解してスピリッツに染み込むまで新樽で熟成され、その後は過度な樽の風味を避けるために数年使われている樽に移し変えるなどして熟成を進めてゆきます。

その間に樽の中ではタンニン・芳香性化合物の抽出、ブランデーの一部蒸発とそれに伴うアルコール度数の減少、そして樽を通して行われる酸素接触によるゆっくりとした酸化と芳香の変化といった現象が起こります。さらに長期の樽熟成によりバニラやすもものような芳香があらわれ、いわゆる「ランシオ」の特徴が生まれます。 また微量な蒸発によって徐々にアルコール度数も下がり、ブランデーは美しい琥珀色へと変わってゆきます。

「アルマニャック」を名乗るためには最低一年間の樽熟成が必要となりますが、熟成年数に応じたラベル表記として「VS(Very Special)・TROIS ETOILES=最低1年以上の熟成」「VSOP(Very Superior Old Pale) =最低4年以上の熟成」「XO・HORS D'AGE=最低10年以上の熟成」といったものがあります。

またさまざまな熟成年数の樽を選び出し、それらをブレンドして度数を最低40度まで下げた上でボトリングされる「ブレンドアルマニャック」と、単一年のビンテージの樽のみを使用してボトリングされる「ミレジムアルマニャック」という分類も存在します。ブレンドものはブレンドされている最も若い熟成年数が表記として適用されますが、ミレジムものは最低でも10年以上熟成したものになり、基本的に樽出しのままの状態でボトリングされるので、度数も大まかに40度から48度ほどの間になっています。

今回ご紹介するのはそんなミレジムもの、且つ圧倒されるような長い熟成を経た稀有なる古酒アルマニャック。しかも蒸留年や瓶詰年、ブドウ品種までもが特定できる、個々の農家によって生産された「シングル・ドメーヌ・アルマニャック」なのです!

これらは言わば「ブランデーのシングルモルトウイスキー」とも表現し得る作品であり、愛飲家として味わう機会を逃せば、人生の楽しみの幾何かを失してしまうのでは…と心配になるほどの「得難き喜び」が詰まったもの。

「ドメーヌ ド ラルーデ」は蒸留した後46度まで自然に度数を落とした70年代初頭の稀少な樽出し品で、フォルブランシュ100%使用の極上アイテム。色は美しいゴールドに心地よい銅色のハイライトを有しており、上品かつパワフルな香りからはトフィー、ドライフィグ、キャラメリゼした洋ナシが感じられます。口に含むとベルベットを思わせるとろけるような口当たりとまろやかでバランス良い味わいに陶然となり、その後ドライアプリコットやナツメヤシ、リコリスといった印象が表れてきます。表情豊かな長いフィニッシュには、グリルしたアーモンドや芳醇なウッディノートが伴います。

「ドメーヌ ド クアトン」はユニブランとバコを使った71年ビンテージ品で、56度で蒸留した後、熟成を経て40度まで自然に度数を落とした樽出しアイテム。美しいマホガニー色にゴールドのハイライトが煌き、複雑かつエレガントな香りからはエキゾチックフルーツ、オレンジピール、かすかなシナモン、バニラをまとったランシオが感じられます。口当たりは力強くまろやかで、ほんのりと心地よい砂糖漬けのシトラスフルーツがバニラやライトなウッドの風味と絶妙に合わさり、口内をくすぐるプルーンやローストしたクルミの風味を伴う長いフィニッシュへと続いてゆきます。

いずれもスモールバッチ生産で、現在では入手難の貴重な2ボトル。そう、アルマニャックは小規模な生産者が多く、近代化や効率化の波に抗えず廃業したり規模を縮小したりする造り手が引きを切らないのも事実なのです。

失われるにはあまりにも惜しい、格別なビンテージアイテム…何より古き良き時代の樽出し原酒がこの価格で買える奇跡、極少量生産の古酒アルマニャックを現代の日本で楽しめる喜びを、一人でも多くの方に享受いただきたい逸品中の逸品です!

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J BALLY PYRAMID CUVEE ART DECO

アールデコの風に吹かれて――幾何とアートのフュージョンラムは、理系エリートが生みの親!

マルティニーク島において純粋なサトウキビジュースを原料とするラム生産を始めた、最初の蒸留所の一つだと言われている「J. バリー」。もともとはペレ山の近くにあるラ・カルベに居を構える小規模な砂糖生産者でしたが、この地所から比類なきラムの名品を生み出すべく力を尽くしたのが、同ブランドの始祖ジャック・バリー氏でした。

ジャック・バリー氏はパリにある工学・技術系エリート養成のための超難関校「エコール・サントラル・パリ」で学を修めた、文字通り「バリバリの理系エリート」。この学校の在学生や卒業生は「サントラリアン」と呼ばれ、OBにはエッフェル塔の設計者ギュスターヴ・エッフェル氏やミシュランの創設者アンドレ・ミシュラン氏、プジョー創設のアルマン・プジョー氏など、錚々たる面々が顔を並べています。

同校を卒業後、エンジニアとして働いていたバリー氏がマルティニークのラビタシオン・ド・ラジュという小さな砂糖生産農園を買収したのは1917年のこと。農園のあるサン・ピエールは1902年のペレ山大噴火によって経済的にも非常に大きなダメージを負っており、この農園買収は新参者のバリー氏にとってもかなりの好条件で行われたようです。バリー氏はさっそく持ち前の知識と技術を総動員させ、新たな蒸気機関を設置すると共にまだ使える既存の設備を改修し、新しい蒸留器を作り上げました。またコニャックの生産手法からインスピレーションを受け、自身のラムのオーク樽熟成を試みるなど、まさに「熟成アグリコールラムのパイオニア」という称号に相応しいパフォーマンスを見せつけたのです。

そしてバリー氏が新事業に奮闘していた1910年代から1930年代、世界的な流行となった装飾表現が「アールデコ」でした。それに先がけ19世紀末から20世紀初頭、ヨーロッパを中心に広がった国際的な美術運動「アールヌーヴォー」は花や植物などの有機的なモチーフを中心に自由曲線を多用し、自然で柔らかみのある表現を特徴としていましたが、第一次世界大戦を境としてコスト高が厭われるようになり、より安価な製造ができモダンなデザインが特徴となるアールデコにとって代わられるようになったのです。

直線的で幾何学図形を主たるモチーフにしたアールデコの記号的表現は、当時の都市化と工業発展を背景に世界中の都市で同時に広まり、建築、工芸、ファッションなどさまざまな分野で多くの作品が生み出されました。ニューヨークのクライスラー・ビルディング、エンパイア・ステート・ビルディングなどはアールデコの代表的な建築物で、日本でもパリのアールデコ博に感銘を受けた朝香宮鳩彦王夫妻がフランス人デザイナーを起用して建設した「朝香宮邸」が、現在の東京都庭園美術館として残っています。

何かしらサイエンティフィックな印象の強いアールデコですが、理系エリート「サントラリアン」であるバリー氏も当時のアールデコ大旋風には並々ならぬ影響を受けたようで、この装飾美術を参考に自らデザインしたのが、今やJ. バリーの顔である「ピラミッドボトル」でした。正三角形を底面に持つ三角錐型のボトルはかつてない強烈なインパクトで瞬く間に評判を呼び、J. バリーのブランドを世に知らしめてゆきました。バリー氏が着想を得たコニャック界隈からは、その後艶めかしい曲線で模られたボトルが続々と出てきましたが、やはり理系のエキスパートゆえか、氏が作り出したのは明晰な数学的思考を彷彿とさせ直線的な美しさが際立つ「ピラミッドボトル」だったのです。

今回はそのピラミッドボトルに、アールデコ調の限定ラベルをあしらってリリースした逸品「J.バリー ピラミッド キュベ アールデコ」をご紹介いたします。

120本のみの入荷となったこちらは、AOCマルティニークの審査会長かつ統制規則の編成者であり、数々の著書もある現セラーマスターのマーク・サシエ氏が特別にブレンドした原酒が籠められたもの。J.バリーにおけるスペシャルビンテージで、フレンチまたはアメリカンオーク樽で熟成された1999年、2006年、2007年がブレンドされており、16年熟成された1999年は樽のニュアンスとほのかなクルミの風味を、ブレンドの要となる15年熟成の2006年は独特の丸みとマセラシオンした果実のような豊かなニュアンスを、そして唯一アメリカンオーク樽で12年熟成された2007年はモカやココアの風味と、J.バリーらしい生き生きとしたフルーティなテイストをこのラムにもたらしています。

もともとアールデコ一世風靡の空気の中で構想された看板ボトルに、さらなる装いを纏わせるのですから、これはもうアールデコの大リヴァイヴァル作品と言ってよいでしょう!

バーカウンターで抜群の存在感を発揮してくれそうなエッジの効いた外観と、ロジックでは説明しきれない官能的な魅力を湛えたその中身と――両者のコントラストを楽しみながら、過ぎし時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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BAS ARMAGNAC GELAS 30YO

ウイスキーのプロも唸った!トップ5の座に輝いたのは、孤高の定番アルマニャック!

日本で唯一のウイスキー専門誌『Whisky Galore(ウイスキーガロア)』。創刊は2017年、ウイスキー文化研究所の代表であり英国やウイスキー関連の著作を多数持つ土屋守氏が編集長を務めるマニア必携の隔月誌です。

徹底した「現場主義」を編集方針に日本国内の蒸留所の最新リポートやアイリッシュウイスキーの総力特集、ウイスキーと炭酸の相性を追究したハイボール特集、さらにはウイスキー以外のジンやバーボンをフィーチャーするなど、スコッチウイスキーの紹介に留まらないフレキシブルで精力的な姿勢で多くの読者を魅了しています。

ニューリリース商品の紹介やバーなどの名店のピックアップをはじめ、土屋氏が厳選したお酒を試飲、採点する「今、飲むべきボトル」、ショコラや葉巻についてのコラムなど読み応えたっぷりの内容になっている同誌ですが、その中でも一般の飲み手の方から酒販業界のプロまで大きな注目を集めている目玉企画が「THE TASTING(ザ・テイスティング)」です。

こちらは毎回新商品を中心とした24本のお酒を6名のテイスターがテイスティングし、綿密なレビューを行うという興味深い連載なのですが、このテイスターのメンバーには「ウイスキーの目利き中の目利き」と言える「マスター・オブ・ウイスキー」の称号を持つ方が半数を占めており、そのプロフェッショナルを極めた鋭い審美眼を通して、我々読者はお酒のキャラクターを知ることができるのです。

さて今回そんな真剣勝負の評価企画において、光栄なことにJIS取り扱いのアルマニャック「ジェラス30年」が「2021年・年間テイスティングランキング」で堂々の5位を獲得いたしました!

2021年のテイスティングボトル144本のうち、アルマニャックはこの「ジェラス30年」1アイテムだけ。しかもトップ50のほとんどを占めているのは当然ながらウイスキーで、ジェラスの他は21位の鹿児島産アブサン、同じく21位のコスタリカのラム、40位の十勝産ブランデー、49位のイングランドのジン、そして31位と49位のコニャックと、ウイスキー以外のお酒は7本しかランクインしていないのです。

コニャックを差し置きアルマニャックがトップ10に入っているだけでも相当な快挙なのですが、本テイスティングだけでなく2021年を総括する座談会でも評価されていたのが、ジェラスのコストパフォーマンスの高さ。ジェラス30年の目安小売価格は16,000円ほどですが、1位から4位のお酒を見てみると、その価格はゆうに3倍、5倍以上…中にはオークションサイト等で20万円近い値が付けられているものも!これらは限定リリース品ということもあり、入手を逃したファンの方を狙って転売が行われているようですが、いずれにしても庶民にとってはなかなか手が伸ばせない高級品だといえるでしょう。

しかしジェラス30年は違います。鳴り物入りの高嶺の花として奪い合われ、一部の人しか楽しめないごく高価なお酒ではなく、いつでも手に入れられ価格もそれほど変動せず、それでいて安定した高い品質を誇る「ひっそりと谷間に咲くユリ」のような存在のお酒なのです。

イメージや広告、一部の人の品評などで、その価値と評価が左右されてしまうことも多いお酒の世界。何十年も品質は変わらないのに、雑誌や評論家の一言で需要や評判が一変する…その点は賛否両論でしょう。しかし磨き抜かれた鑑定眼を持つ『Whisky Galore』のテイスターの方が、隠れた逸品であるジェラスを見出し高い評価をくださったことは、インポーターとしてただただ喜ばしい限りです。

「有名」「高価」「限定」イコール「美味しい」ではなく、安価で知名度の低いお酒が不味いわけでもありません。新商品、限定品は確かに強く私たちを惹きつけますが、ジェラスのように長年の定番商品としてあり続けているお酒は、やはり確かな理由をもって名誉ある「定番」の地位を確立しているのです。

あらためて、今あるお酒の世界を見渡してみてください。粛として変わることなく、私たちに喜びをもたらし続けてくれる草陰の泉のような作品が、必ず見つかるはずです。

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DISTILLERIE BIELLE RHUM BRUT DE FUT 2014 ・ RHUM VIEUX 2008

生まれはカリブ・マリーガラント。ラム・ブランの雄が放つ、カスク香る熟成ラム!

マリーガラントはカリブ海に浮かぶマルティニークの北、グアドループのすぐ南に位置する直径約15km、面積150haほどのとても小さな島で、その大きさは沖縄の宮古島や、琵琶湖に浮かぶ有人島の沖島と同じくらい。徒歩三時間あまりで一周できてしまうほど、こぢんまりとした島です。

アラワク族やカリブ族などの先住民がキャッサバ栽培や漁業を営みながら暮らしていたこの島に、かのクリストファー・コロンブスが上陸したのが1493年。その時の旗艦「マリア・ガランダ(gallant Mary=勇敢なマリー)」の名が現在の島名となりました。

その後1649年からフランスによる入植が始まりましたが、先住民との間で争いが続き、1660年にようやく先住民と植民者との講和条約が締結されます。また同じ頃、プランテーション栽培に従事させるためのアフリカ人奴隷が初めてマリーガラントへ連れてこられ、1671年には島の人口の約57%がアフリカ系で占められるようになりました。そしてその一方、ブラジルから追放されマリーガラントへ移住したユダヤ系オランダ人が島に持ち込んだのが、ラム造りに欠かせないサトウキビの栽培技術だったのです。

さて今回ご紹介する「ビエール」は、マリーガラントのラム造りにおいてリーダー的存在となる蒸留所。その歴史は1769年に遡り、コーヒー農園を経営していたジャン・ピエール・ビエール氏が買い取った「ラ・マグドレーヌ」という地所が起点となります。1826年にはジャン氏の息子たちがここに製糖工場を設立、その後幾名かに所有権が移りましたが、20世紀初頭にはラムの生産が始まり、1955年にオーナーとなったポール・ラモー氏によって本格的なラム蒸留所としてスタートを切りました。さらに1975年にはポール氏の甥、ドミニク・ティエリー氏が経営と生産を受け継ぎ、蒸留所の設備の近代化を敢行、より高品質なアグルコールラム製造に着手したのです。

そして今や西インド諸島で最も有名な蒸留所の一つとなったビエールですが、同社が誇る看板アイテムが「ラム・ブラン(=ホワイトラム)」。

カリブで生産されるアグリコールラムは、特にブランの状態ではサトウキビの個性が非常に強く前面に出ているため好みが分かれるとよく言われますが、このビエールが手掛けるブランはアグリコールラムならではのサトウキビの風味をしっかりと身に籠めつつ、同時に繊細かつまろやかな甘みを有す傑出したもの。スタンダードクラスながら、これだけふくよかでしっかりとした甘みを持っているのはビエールならでは。「ラム・ブランはちょっと苦手で…」という方にこそ、ぜひお試しいただきたい大傑作なのです。

パリ農業コンクールの2011年、2013年では金賞も獲得している「ビエール ブラン」、これからますます暑くなる季節にぴったりの一本ですが、本日はさらに上級クラスとなるビンテージ・ラム「ビエール ラム ブリュット ド フ 2014」と「ビエール ラム・ビュー 2008」をご紹介いたします。

「ビエール ラム ブリュット ド フ 2014」はバーボンカスクとコニャックカスクで7年間熟成させたカスクストレングスで、蒸留所のノウハウが存分に生かされた逸品。ドライフルーツの香りがオークの樽香と混ざり合うことで引き立っており、味わいは力強く、スパイスがハチミツの風味と共に開いてゆき、フィニッシュには砂糖漬けのアロマが豊かに溢れ出します。

対して「ビエール ラム・ビュー 2008」はバーボンカスクで10年間熟成されており、エキゾチックなフルーツのアロマのリッチなハーモニーに驚くこと請け合いの仕上がり。バーボンとハチミツをまとったバニラがバランス良く香り、エキゾチックなフルーツのハーモニーと柔らかく丸みのある滑らかで長いフィニッシュが特長です。

ちなみに「ブリュット ド フ」とは澱引き後加水せずに直接瓶詰めした「カスクストレングス」のラム全般を指しますが、ビエールはこの「ブリュット ド フ」の販売をはじめた最初の蒸留所の一つだと言われています。通常ラムは熟成後、よりソフトなノートを得るために多くが加水されていましたが、ビエールはあえて加水を行わないことでアルコールの力強さと香りの豊かさのバランスを完璧に兼ね備え、非常に表情豊かなノートを放つラムを生み出したのです。そしてこれらはたちまち多くのラム愛好家を魅了し、その後多くの蒸留所が追随することとなりました。

絶大な人気を誇る「ビエール ブラン」の味わいをご存知の方ならば、同社の経験と知識が総動員されたビンテージ・ラムがいかに素晴らしいものに仕上がっているか、想像に難くないでしょう。

ラム・ブランで軽快な飲み口のアペリティフ・カクテルを楽しみ、食後には特上のビンテージ・ラムをお供に身も心もくつろぎの境地へ――「いただきます」から「ごちそうさま」まで、美味しいお食事にパーフェクトに寄り添ってくれるのが、ビエールのラムです!

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NEW GROVE 8YO CASK ACASIA FINISH

無念の現地終売なり…ファラオも愛用した逸材、アカシア樽がラムを錬磨す!

インド洋の楽園モーリシャスで造られる、高品質ラムの代名詞となった「ニューグローブ」。本コラム#025でご紹介した「エモーション1969」の最高金賞受賞にともなう完売続きという状況もあり、今一番目が離せないブランドです。

そのニューグローブの限定品で、非常に人気のある「ニューグローブ8年 ダブルカスク アカシアフィニッシュ」が、この度惜しくも現地終売となることが決まりました。エモーション1969よりぐっと身近な価格帯となる本アイテム、急ぎ皆さまに入手いただけるようご紹介させていただきます。

アカシアといえば、まず甘いハチミツを連想する方も多いでしょう。そんな樽で寝かされたお酒と聞くと、なんだかとろりと甘い香りが漂ってきそうな印象を受けるかもしれませんが、実は日本でハチミツの蜜源として知られる「アカシア」は本来のアカシアではなく「ニセアカシア」と呼ばれるマメ科ハリエンジュ属の樹木なのです。これは1873年(明治6年)にはじめてニセアカシアが日本に持ち込まれた際に、アカシアと似たこの樹を見誤って「アカシア」と呼んでしまったのが起こりとのこと。その後、マメ科ネムノキ亜科アカシア属となる「本物のアカシア」が輸入されるようになり、これと区別するためにあらためてニセアカシアという呼称が付けられたのだそうです。

さて、具体的にアカシアとニセアカシアの違いを挙げますと、まず分布地からして異なります。アカシアがオーストラリア大陸、アフリカ大陸に多数の種が分布しているのに対し、ニセアカシアは北アメリカ原産で、そこからヨーロッパや日本など世界各地に移植されていったのだそう。そしてひと目ではっきりわかる違いといえば、その花の形状です。アカシアはポンポンとした花火を思わせる黄色く可憐な花をつけますが、ニセアカシアは藤の花のように垂れ下がる形で美しい蝶々型の白い花を咲かせます。開花期はアカシアが3~5月、ニセアカシアは5~6月、一般的にミモザと呼ばれるフサアカシアはパウダリーで優しい芳香を放ち、ニセアカシアはハチミツの材料となるだけあって、強く甘い香りが特徴になります。

ちなみに北原白秋作詞の童謡『この道』や昭和のヒット曲『アカシアの雨がやむとき』の中で歌われる「アカシア」は、ニセアカシアのことなのだとか。甘く芳醇な香りを放つ白い花は、数々の芸術家の心に深いインスピレーションを与えてきたのでしょう。

ところで今回ご紹介するニューグローブのラムが眠りの時を過ごしたのは、ニセではない「アカシア」の木材を使った樽。アカシア材は濃淡のある茶系の色合いが美しく、フローリングや家具の材料としても愛されているもので、大英博物館に保存されている古代エジプトのファラオの椅子もアカシア製なのだそう!一般的に硬く耐朽性に優れており、湿度による伸縮も少なく、成長が早いため安定供給できるという点が、長きにわたり重用されてきたポイントだといえるでしょう。

とは言え「お酒を熟成させる樽」とくれば、やはり一番に浮かぶのは「オーク」すなわち楢(ナラ)の材を使ったものではないでしょうか。フレンチオーク、アメリカンオーク、ミズナラ等々…お酒好きの方ならきっと馴染みのある言葉でしょう。たとえばスコッチウイスキーなどは「熟成は700リットル以下のオーク樽で行わなければならない」という厳密な規定があるくらいですが、対してアイリッシュウイスキーはアカシアをはじめとするオーク以外の樽での熟成も許可されており、生産者たちはさまざまな材種の樽使いに挑んでいるようです。

さらにアカシア樽はラムやワインの熟成にも重宝されており、ワインにおいてはシャブリやヴァランセなどのフランスはもとより、英国やスイス、キプロスやオーストラリア、また南アフリカのワイナリーなどで白ワインの熟成を主に多く使われています。実際「南アフリカ史上で最も著名なワイン」とも称賛される甘口の「ヴァン・ド・コンスタンス」も、熟成にアカシア樽を使用しているのだそうです。

フローラルでフルーティーなフレーバーが強調される仕上がりとなるのが特長という、アカシア樽での熟成。そして「ニューグローブ 8年 ダブルカスク アカシアフィニッシュ」はフレンチオークの新樽とコニャックの古樽を半々に7年間熟成したラムを、さらにアカシアの新樽で1年追加熟成させたという趣向を凝らした作品!生産者いわく新樽と古樽をブレンドさせることでタンニンが和らぎ、仕上がり時のアロマと口当たりがぐっとアップするのだそうです。

口に含むと熟した甘いバナナ、イチジク、キャラメル、蜜蝋、アーモンド、柑橘類、ほのかなブラウンシュガー、ドライフルーツ、かすかなバニラ、花、クローブ、シナモンが次々とあらわれ、驚くほどデリケートでコニャックのようなニュアンスも感じる、リッチでフルボディな一本!冷却ろ過や着色は一切行われておらず「100%ナチュラルなシングルエステートラム」として完成された匠の品なのです。

現地終売という事実は誠に残念ではありますが、もとより独自製法による豊かなフレーバーを誇るニューグローブのラムにアカシア樽がどのようなブーストをかけているのか――今この時を逃してしまっては、もう知る由もないのです…!

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